第26章 裏表なきは君子の扇かな
土「おう、待ってたぜ」
沖「待ちくたびれやしたよ、お姉さん」
なんでこの二人よ!?
よりにもよって、なんで!?
絶対嫌がらせだよね、これ!!
何の恨みが私にあるってのよ!!
真剣なしでこの二人と戦えってか!?
んなの死ねっていってるようなもんじゃんか!!
『なんでよぉ・・・ったく・・・』
沖「大人しくしてればいいんですぜィ。あんたが逃げるから俺たちまで巻き込まれる羽目になってるんでィ」
土「手荒な真似はしねぇ・・・が、それはお前しだいだな」
じゃあなんだよ、その手は!
その刀の柄にかかっている右手はなんだ!
『大人しく・・・は、無理かな!』
私はそばにあった木の枝をつかみ、腕の力と地面を蹴った時の力を利用して枝に上る。
そのまま塀の石垣に手をかけ、上へ登った。
が、それを読んでいたように火薬のにおいと銃声が聞こえた。
それを避けられないほどの実力を持っていないわけではない。
足を狙ったのだろう、少し下げた右足すれすれに貫通痕が残っている。
『っぶね・・・とっ』
いつの間にやら登って来ていた総悟の剣をひらりとかわして見せる。
総悟に向きなおれば、また火薬のにおいがした。
頭を下げれば、弾が髪に触れて、地面に刺さる。
頭を下げるとは思っていなかったのだろう、トシが足元を斬り上げようとして、驚いているのが見えた。
そのまま右足を振り上げ、トシの顎を蹴り上げた。
しかし、軽くひるんだくらいで特にダメージはないようだ。
そりゃあ手加減して蹴ったんだから文句はない。
『これ以上はやばいかな・・・』
私は石垣を蹴ると、屯所側ではない方の地面に着地した。