第21章 初めての・・・
『へ~・・・結構きれいなところですね』
部屋を歩き回る瑠維ちゃん。
そういえば・・・違和感なかったけど、瑠維ちゃんって背ェ高い方なんだね。
『近藤さん、明日からですよね?仕事』
近「え?あ、うん」
『それまでいろいろ見てきたらどうですか?久しぶりなんでしょう?』
少しだけ・・・ほんの少しだけ瑠維ちゃんの顔が曇った。
そうか・・・瑠維ちゃんには本当の故郷がないのか・・・
近「一緒に見て回ろう。トシや総悟の生まれたところだ。見てみたいだろう?」
そういうと、驚いたような表情をしたが、はい!と嬉しそうに笑った。
それからいろいろな所を見て回った。
その途中、昔ケンカ仲間だった男に偶然出会った。
「近藤か?」
近「おお!久しぶりだな、元気だったか?」
他愛もない会話。でも、それで帰ってきたんだと実感が出来る。
瑠維ちゃんは空を見上げ、何か考えているようで・・・
「すげぇ美人だな。彼女・・・なわけねぇか」
近「ああ、俺の彼女じゃない。トシのだ」
「トシ・・・ああ、アイツか」
風が頬を撫でていく。
セミロングで群青色の髪がさわさわとなびいていた。
白い肌、小さな顔、大きく切れ長の目、薄い唇・・・
まるで絵のような・・・人形のような・・・
そこだけ時が止まっているように感じられる。
俺は携帯を取り出すと、一枚写真を撮り、トシに送った。
「なにやってんだ?」
近「いや・・・綺麗だったから」
「そうだな。ったく・・・アイツ、顔は良かったからな」
また他愛もない話をしていると、携帯が震えた。
トシからのメール。見て噴き出した。
[あんまり撮らねぇでくれ。
俺が知らねぇところでそんな顔してるって思うと、腹が立つ]
ぞっこんだな・・・。
男とは別れ、また歩き始める。
まったく一言も発しない瑠維ちゃんは、景色に見とれているようだった。