第28章 オトリの凄さ
~菅原side~
「大地、オレちょっと先に出てるね?」
サクッと着替えを済ませ、足早に外へ出る。
旭が復活して、西谷も元気になって、日向と影山が上手く纏まって···オレも浮上して。
一見、万事オッケーみたいに思えるけど。
でも、何か引っかかるんだよな。
小骨が喉に刺さってる、違和感みたいな···そんな感じが。
あの時の紡ちゃん、少し様子が変だったから。
なんかこう···傷付いた顔、してた。
その後はいつものように元気に見えたけど、でも。
清水とスクイズ配る時も、影山の側へは行かなかったようにも見えたし。
···オレの、気のせいかな?とも思うけど。
清「ダメ、危ないから」
『大丈夫ですよ、急いで帰れば』
清「それでもダメ。どうしてもって言うなら、私が一緒に帰る」
『そんな事したら清水先輩の帰りが危ないじゃないですか!』
清「ほら?やっぱり危ないんじゃない」
『いえ、それは言葉のあやで···』
体育館の前で、清水と紡ちゃんが軽く押し問答をしているのを見てオレは駆け寄った。
「二人とも、どうした?」
清「菅原···」
『スガさん···?!』
オレを見る二人は、まぁ、清水は普段と変わらないけど、紡ちゃんはどことなくバツが悪そうに見える。
清「城戸さんが、影山を待たずに一人で帰るって言うから」
「え?!もう少し待ってれば影山来るけど?」
『···大丈夫です。とにかく、今日は一人で帰ります···そうしたいんです』
いや···まだそんなに遅い時間ではないとはいえ、女の子を一人で歩かせてもいい時間とは言えないだろ。
ただでさえ、いつもの時間より遅くはなってるんだし。
「分かった。じゃ、オレが送って行く」
清「菅原、そうしてくれると助かる」
『スガさん、別に送っ、』
「じゃ、影山を待つ?」
紡ちゃんが返す答えなんて分かってるから、言葉尻を待たずにそう言って見れば、予想通り言葉に詰まってしまう。
「なんだったらオレ、ひとっ走り呼びに行ってもいいけど?」
紡ちゃんは絶対そんな事をさせないと分かっていて、更に詰めてみる。
これ位しないと···紡ちゃんは意外と意地っ張りなところがあるからね。
そこがまたカワイイんだけど。
『スガさん···宜しくお願いします···』
「オッケー、じゃ清水、大地に言っといて?」