第40章 指先が奏でるもの
これまで色々あった烏野がどこまで突き進めるかの大事な試合でもある。
青城との練習試合の時は及川さんじゃねぇ、あのチャラけたセッターだったし。
あの時は故障でとか言ってたけど、明日の大会は間違いなく及川さんが出て練習試合の時とはまるで違う相手になる。
絶対負けたくねぇ。
湯船の中で拳を握り、何度かその表面を叩く。
勝ちたい。
何としても、例えフルセットになっても。
勝ちたいんだ。
勝って、正々堂々と城戸に・・・いや、そうじゃねぇ。
俺は、アイツと対等にいたい。
勝って凄さを見せたいんじゃねぇ。
俺自身を・・・見て欲しいんだ。
真っ直ぐに、ありのままに、俺だけを。
だからこそ、その為には及川さん・・・いや、岩泉さんに勝たねぇと意味がねぇ。
湯船の中に落とした手をグッと握り締め、大きく息を吐く。
もう終わったことだと言っていても、城戸の中には岩泉さんの存在が大きく残ってる。
けど、そんなの関係ねぇ。
俺はそんなアイツを丸ごと好きになったんだ。
岩泉さんの存在は確かにデカい。
が。
いつか俺がその岩泉さんよりも大きくなればいいだけのことだ。
全ての始まりは明日だ。
そう覚悟を決めて湯船から勢いよく立ち上がり、よし、と大きく息を吐く。
とにかく今日は早く寝て、明日の朝いつも通りのルーティンをこなし、それから城戸と待ち合わせてる場所で・・・いや、城戸んちまで行って一緒に烏野まで行く。
普通通りでいい。
いつも通りでいい。
何よりそれが、俺にとって一番心落ち着く1日の始まりだ。