第28章 オトリの凄さ
繋「はぁ···」
そんな事を考えながら清水先輩と記録を確認していると、繋心のため息が聞こえてくる。
武「そんなにレシーブ酷かったですか?ため息が出るほどに」
繋「いや、それは置いといてだな。自分がプレーヤーとして選ばれる側にいた頃は、考えもしなかったがな···選ぶ側っつーのも、いろいろ悩むモンだよな···」
繋心が言っている選ぶっていうのは、きっと···セッターの事だ。
ポンっと指示を出して、それがすぐに出来てしまう影山と。
それまでみんなとのコミュニケーションを取りながら信頼を集めてきた、菅原先輩と。
攻守のバランスが取れれば、ダブルセッターっていう作戦もあるけど、でも今は···
繋「おい、チビッ子。もしお前なら、どうする?」
『え?』
繋「もし、お前なら···いや、やっぱいい」
言いかけて止めるとか、気になるじゃん!
『繋心、まだ···始まったばっかりだよ?私達も、繋心も。だからさ···』
繋「あ?」
そう、大事なのは今よりも、これからの事だから。
『だからね、悩め悩め?そして、昔みたいにハゲつるになっちゃえ?』
イタズラに笑って、過去の坊主頭を指差して笑う。
繋「ばっかやろ!あれは坊主だっつーの!何回言や分かんだよ!···ったく、今のは忘れろ、いいな!で、チビッ子はマネらしく、アイツらにタオルやらドリンクやら配って来い!分かったか?!」
『はぁい!清水先輩、急に偉そうなコーチから指示が出たんで、お仕事しましょ?』
ベーッと繋心に舌を向けて清水先輩に言うと、クスリと笑って、そうね、と返してくれた。
みんながストレッチを終わる頃を見計らって、清水先輩といつものように手分けしてタオルやスクイズを配り歩く。
···何となく、影山の所へは行きにくくて。
気は引けながらも、清水先輩の持つ籠に影山の物をそっと入れて私は澤村先輩達の方へと歩きだした。
『はい大地さん、スガさん?タオルとドリンクです』
澤「ありがとう」
菅「紡ちゃん、ホントは混ざりたかったんじゃない?」
受け取りながら菅原先輩が私を見て笑いかける。
『アハハ···実は、そうかも?なんて』
そんな風に返しながら笑って返し、次の人の元へと向かう。
『東峰先輩、どうぞ?』
旭「あ、ありがとう城戸さん···あの、さ?···えっと···」