第28章 オトリの凄さ
オレの···役割···
コートを駆け抜け、敵を惑わして···スパイカー達を自由に羽ばたかせる、仕事。
それは、オレにトスさえ上がれば、オレだって今みたいに自由に···羽ばたける!
ピリピリとする手のひらを見て考える。
オレにだって高い壁の向こうを見せてくれたのは···影山だ!
オトリがカッコ悪いだなんて···
「思わない···」
影「あぁっ?!」
「···思わないっ!!」
ありったけの気合いを込めて、思いっきり返事をする。
影「よしっ!」
さっきとは違う影山の表情に、なぜかホッとして。
だけどその反面、どうして影山は···さっきまでオレが考えていたことに、誰よりも早く···気が付いたんだろうって思った。
もしかして影山も、前に誰かにオレと同じ思いをぶつけていたとか?
オレが、旭さんに憧れているように。
影山も誰かを···
そっと旭さんを振り返り、その姿をマジマジと見る。
影山にも、旭さんみたいな人がいたの、かな?
···もしかして、青城の人か?
でも、あんまり仲良さそうな感じじゃなかったよな?
旭さんは、オレの事···面倒でナマイキな1年とか、思ってるんだろうか。
旭「いまの1発、凄かった」
旭さん?
ネット際で旭さんから声をかけられ、テンションが上がった。
誰にどう思われたっていい!
オレは、絶対エースになるんだから!
影「練習中断して、すみませんでした」
いつの間にかキャプテンの所にいる影山に気が付き、オレもすみませんでしたと頭を下げた。
影「試合の続き、」
「「 お願いします! 」」
田「おっしゃ!一気に追い上げるぞ!!」
「「 ッス!! 」」
練習試合が再開され、復活した旭さんはもちろんの事、オレも···影山からのトスを受け、スパイクを決める。
また、烏野に点が入った!
大事なのは今だけじゃない。
これから先どう進むかが大事なんだ。
だから今は、オトリでもいい。
いつか、エースになる為の試練だと思えば何ともない。
エースが取った1点も、オトリのオレが取った1点も同じ。
それを教えてくれた影山にチラリと視線を送りながら、オレはコートの中で大きく呼吸をした。