第28章 オトリの凄さ
ブロック···嫌だ···
烏野に来るまで、どれだけブロックに苦しんで来たか···
止められるのは···嫌だ!!
オレはエースになりたいんだ!
だから···だから···
何度も何度も過去を振り返り、苦い思いが思いが込み上がってくる。
目の前にブロックなんかいたら、オレに勝ち目なんかない。
エースみたいな戦い方は出来ない。
でも···
だけど···
だったら···
影 ー 俺がいれば···お前は最強だ! ー
影山が、曇りがかった気持ちを振り払ってくれた。
影山の言葉が、オレを奮い立たせてくれる。
コートの、端から端へ。
ガムシャラに走って、勢いのままに飛んだオレの手に
···なんの合図もしてない、ドンピシャなトスが上がる。
このまま腕を振り抜けば!
なんにも遮られていないネットの向こう側に···
ー ピッ!! ー
オレのスパイクが、落ちた。
自分の手を見つめ、この感覚、ボールの重み···それから、なんかいろいろを感じながら···その手を握りしめた。
影「お前はエースじゃないけど。そのスピードとバネと、オレのトスがあれば···どんなブロックとも勝負出来る。エースが打ち抜いた1点も、お前が交わして決めた1点も同じ1点だ」
エースが···旭さんが決めた1点と?
オレが決めた1点が···同じ···
同じ、1点···なのか?
影「エースの冠が付いてなくても、お前は誰よりも点を叩き出して。だからこそ、敵はお前をマークして···他のスパイカーはお前のオトリのお陰で自由になる···エースもだ!···ね!!」
田「おっ?!おうっ!」
オレのオトリで···旭さんも、田中先輩も···自由に···
田「おうおう、そうだぞ?お前のオトリがあんのとないのとじゃ、オレ達の決定率か全然違うんだぞ?」
田中先輩からも、ズシリと響く言葉をかけられる。
オトリ···
それだけ聞けば、エースみたいにカッコイイ響きなんかない。
だけど、今は···
大きく息を吸い込み、心に溜まったドロドロした物を一気に吐き出して影山の顔を見た。
影「それでもお前は!今の自分の役割が、カッコ悪いと思うのか!!」