第28章 オトリの凄さ
影山が日向君にかけた言葉が、頭の中でリフレインする。
オレがいれば、お前は最強だ!
エースが打ち抜いた1点も、お前が交わして決めた1点も同じ1点だ。
影山は、どんな事を思って日向君に言ったんだろう。
ただ、それだけを考えてた。
中学の時、【 孤独の王様 】って言われてた影山が、何だか少し、遠くに感じて。
凄いなぁ···影山は。
私は、ただ何となく···日向君の様子が変だな、とは感じてた。
そして、それはきっと。
東峰先輩への憧れとか、それに伴っての···背が欲しいとか、そんな事くらいしか思いつかなかったのに。
影山は···
特に会話を交わすこともなく、それ以上の事まで見抜いてた。
ー お前は黙ってろ!! ー
さっきの言葉を思い出し、影山に押された場所をそっと触れてみる。
何にも分かってなかったのは、私。
何にも気付いていなかったのは···私。
ダメダメじゃん、私。
自分で自分を卑下して、落胆の息が漏れる。
もっと、ちゃんとしなきゃ。
一人一人のコンディションや、その時々の気持ちの変化。
そういうの気配りをきちんと出来ないうちは、胸張って烏野のマネージャーです!なんて···言えないよなぁ。
だから、影山にあんな風に言われても仕方ないのかも知れない。
せめて、黙ってろ!とか言われないレベルには···成長しなきゃね。
ー ···ゃん?···~い···ちゃん? ー
とにかく、落ち込んでいるヒマはない。
さっさと成長して、みんなの為に一生懸命にならなきゃ。
···じゃなきゃ、意味が···ないから。
菅「紡ちゃんってば!」
『ははは、はいっ?!···って、スガさんかぁ、ビックリさせないで下さいよ···』
いきなり両肩を揺すりながら声をかけられ、目の前にいる菅原先輩を認識して一歩下がる。
菅「なんだじゃないって···さっきからずっと声掛けてんのにさ···」
さっきから?
全然分からなかった···考え事に没頭し過ぎてたから。
『あ、すみません···ボケっとしちゃって。それで私に用事ですよね?』
菅「用事っていうか、ほら、町内会チームの人達が帰るから挨拶に行かないと!みんな紡ちゃんが来るの待ってるからさ」
『ひゃぁぁぁ!ごめんなさい!すぐ行きます!!』
そう叫んで、私は菅原先輩と体育館の入口まで駆け出した。