第10章 烏野高校男子バレー部
翌日、早々とセットしたアラーム音で目が覚める。
んん・・・
まだ重くて開かない瞼を擦り、ベッドの中で背伸びをする。
起き上がり思い切りカーテンを開けると、まだ外は薄暗く、早くも心が折れそうになる自分を奮い立たせるために窓を全開にして新しい空気を肺いっぱいに取り込む。
こんなに早起きしたのは初めてかも?
なるべく物音を立てないように支度を済ませ、早くお弁当作んなきゃ・・・朝ごはんは、途中で買って食べながら行けばいいか、などと考えながら階下に降りる。
そっと荷物を玄関に置き、リビングを振り返ると明かりがついていた。
あれ?誰か消し忘れた?
城戸家ではたまにある事だから、特に何も思わずリビングの前まで来ると炊きたてのご飯と、お味噌汁の香りが鼻をくすぐる。
え?なんで?
驚きながらドアを開けると、キッチンにはエプロン姿の桜太にぃがコーヒーを落としているところだった。
『桜太にぃ・・・なんで?』
声をかけると桜太にぃは、こちらを向き
「あ、起きてきた?おはよう紡。朝ごはん出来てるから食べちゃいな?なんだか早く目が覚めちゃってさ、俺もいよいよ歳かね~?はい、お弁当も出来たよ?」
そういって笑う。
絶対違う。
絶対ウソだ。
桜太にぃがこんな時間に起きているとしたら、病院の仕事が準夜で帰ってきたか、もしくは緊急の患者さんがいて、病院に呼び出されたか、それくらいしか思いつかない。
でも昨日、桜太にぃはこれから3日間休みだと言っていた。
それなのに、朝食どころかお弁当まで・・・。
私は朝から胸がいっぱいになり、桜太にぃに近づくと、その広い背中にキュッと抱きついた。
「おっと?どうした急に、朝から甘えん坊さんごっこかな?」
私は抱きついたまま、フルフルと頭を振り、
『桜太にぃ、ありがとう・・・』
そう伝えると桜太にぃは、振り返り私の頭をポンポンっとした。
その時、フッと息をつきながら桜太にぃの口元が緩んでいた事は、私には見えなかった。
その後私はバランスよく準備された朝食を噛み締めながら食べ、手早く片付けてお弁当セットを掴むと、じゃあ・・・行ってきます・・・と声をかける。
それを聞いて桜太にぃはエプロンを外し、代わりにパーカーを羽織り玄関まで一緒に来た。
・・・と、思ったら、桜太にぃも靴に履き替える。