第10章 烏野高校男子バレー部
『外まで見送りしなくて大丈夫だよ?』
私が荷物を持ちながら桜太にぃに言うと、
「アハハ、違うよ?紡を学校まで送るんだよ。まだ薄暗いからね?」
『えっ?!そこまでしてくれなくて平気だよっ!私の勝手なわがままで朝早く学校行くんだからっ』
朝早い時間、しかも玄関先だ言うことをすっかり忘れて大声になる。
すると階段を慧太にぃがあくびをしながら降りてきた。
慧「おい紡。朝からウルセーぞ」
『あ・・・ゴメン慧太にぃ、起こしちゃって・・・』
慧「うんにゃ。なんだか分かんねーケド、頑張っとけよ?」
『うん!』
「じゃ、慧太行ってくるね」
慧「おぅ」
クスクスと笑う桜太にぃに背中を押され玄関を出て車に乗る。
さっきの2人の感じ、まるで打ち合わせでもしていたかの様だった。
『桜太にぃ、あのさ・・・』
桜太にぃは運転しながら、ん?って返事を返す。
『やっぱ何でもない・・・』
「そぅ?ならいいけど」
今日、学校から帰ったら、もう1度2人にありがとうを言おう。
そう心に決めて、窓の外を流れていく景色を見送っていた。
歩くと30分程の学校までの道のりは、車だとあっという間だった。
桜太にぃが校門の手前で車を停めてくれたから、忘れ物をしないように確認してから車を降りる。
桜太にぃも1度車から降りて、じゃあ行ってらしゃいと言葉を交わしていると、少し離れた所から声がした。
「えっ?!紡ちゃん?!」
声のした方へ向き直すと、バタバタと走りよってくる菅原先輩の姿が見えた。
『おはようございます、菅原先輩』
菅「お、おはよう・・・じゃなくて!どうしたの紡ちゃん?!なんでこの時間に?!」
息を切らせながら菅原先輩は早口で言うと、私の隣にいる桜太にぃに気が付いた。
菅「おはようございます、3年の菅原です。えっと・・・?」
桜「おはようございます。紡の兄です。妹がお世話になっています」
桜太にぃが丁寧に挨拶すると、菅原先輩は、いぇいぇとんでもないです!と慌てた。
『じゃ、行ってきます。桜太にぃ、送ってくれてありがとう』
そう言うと、手のひらをヒラヒラさせながら車に乗り込み、いま来た道を戻って行った。
『菅原先輩、行きましょう?』
菅「え?あ、うん。」
お互い何となく黙ったまま歩き出す。
菅原先輩が何となくソワソワしている。