第10章 烏野高校男子バレー部
~城戸家のリビング~
【 桜太にぃ、慧太にぃ、ありがとう。2人とも大好き!】
そんな思ってもみなかった妹からの大好き発言攻撃に、2人の兄は固まっていた。
慧「桜太、聞いた?」
桜「あぁ、聞いたよ」
慧「紡が、大好きだってよ」
桜「そうだね」
2人とも顔を見合わせて、フッと息を吐く。
慧「やっぱお子ちゃまだな、紡は」
桜「いくつになったって、俺達の大事な妹なのにね?でもさ、あんな風に言われると嬉しいと思わない?」
コーヒーを落しながら桜太は言った。
慧「しっかしなぁ、5時とか早すぎんだろ?いくら春とはいえ、まだ薄暗いんじゃねーの?」
カップを受け取りながら慧太がぼやく。
桜「それなんだけどさ、ちょうど明日から俺は3日間休みなんだよね。だから、休みの間は俺が学校まで送ってくるよ」
慧「マジか?」
桜「マジだよ?その代わり、その後も早く行くようなら・・・」
慧「お、任せろ。桜太にだけいいカッコさせられねーしな!」
任せたゾ、弟よ!と、ちょっとオーバーな位に桜太は慧太の肩を叩く。
慧「でもよぅ、桜太はあんなに早く行く理由、気にならねぇの?」
桜「ん?なるよ?」
カップに口をつけながら桜太は言う。
慧「じゃあなんで無理にでも聞かなかったんだ?」
それはねぇ・・・と言いながら桜太が組んでいた足を揃え慧太を見据える。
桜「俺の直感なんだけどさ、紡が・・・何か変わろうとしてる気がしたから」
慧「あ?なんだそりゃ?」
桜「こう・・・なんて言うか、去年の秋くらいから閉じこもりがちだった紡が、烏野に入学して、今、その殻を破りつつある・・・的な?慧太は分からない?」
ムムム・・・と難しい顔をした慧太を見て、桜太は不敵に笑う。
慧「あ~!またその、顔!前の時もそうだけどよ。なんだよオレだけ分かんないとか!」
桜「フフッ、慧太はまだまだですな。それじゃ俺も早起きになるから部屋に戻るよ。おやすみ」
そう言い残して、桜太も自室へ戻る。
リビングに残された慧太は、1人悶々と桜太に勝てない自分をもどかしく思っていた。