第28章 オトリの凄さ
~日向side~
何なんだよ、クソ影山。
わざわざ次の攻撃教えてどうすんだよ。
···あんなデッカイブロック、オレじゃ打ち抜けないのに。
改めて町内会メンバーの人や旭さんを見て···オレに出来るワケないだろ、と、視線を落とす。
影「今のお前は···」
急にかけられた声に、影山を振り返った。
影「ちょっとジャンプ力があって、素早いだけの···ヘタクソだ!···大黒柱のエースになんかなれねぇ」
「ンぐっ···」
田「お、おい!」
そんな事···影山に言われなくったって、わかってるよ!
影「でも!···オレがいればお前は最強だ!!」
「え···」
影···山?
影「東峰さんのスパイクはスゲー威力があって、3枚ブロックだって打ち抜ける」
旭「え?いゃぁ、でも···毎回じゃないし···」
西「動揺し過ぎッス!」
確かにそれは、旭さんがいうように毎回じゃなくても···
それでも旭さんのスパイクは凄いんだってことは、オレにだって分かってる···だからこそ···
影「じゃあお前はどうだ。オレがトスを上げた時、お前はブロックに捕まった事はあるか?」
影山がトスを上げた···時···?
今までの事を、ゆっくりと思い出す。
影山がオレにトスを上げた時···それは···
ひとつずつを思い出す度に、曇りがかった心の目が···クリアになっていく感じがした。
なんだ···
なんだよ···
影山のクセに、なにカッコイイこと···言ってんだよ···
ー ナイッサー! ー
澤「ナイスレシーブ!」
顔を上げれば、ハッキリと分かること···
ブロック···デカい···
思わず、目を閉じたくなる。
影「交わせ!それ以外出来ることあんのかボゲェ!!」
影山の怒鳴り声に、つま先に力が入り···走り出す!
···打ち抜けないなら、交わす!!
コートの···端から端まで、走り抜ける!!
何で、忘れてたんだろう。
どうして、気がつけなかったんだろう。
出来ない事は、これから出来るようになればいいんだって事を。
今のオレの役割は、誰より凄い···オトリだって事を!!
真剣に動けば動く程、相手チームのブロックが着いてくる。
今だ!!
「「 ああっ!! 」」
キュッと足にブレーキをかけて、オレは逆方向へと···また、走り出した。