第28章 オトリの凄さ
~影山side~
日向があれほど俺に感情で怒鳴ってきたのは初めてだ。
ー ナイッサー! ー
田「よっしゃー!来いやー!」
試合の続きが始まり、いま、俺も日向も前衛だ。
滝「おっ?高校生チームは今、攻撃力が一番高いローテかなぁ?···あのチビッ子の速攻には気ぃ付けないとな」
旭「はい!」
町内会メンバーの人と···東峰さんが前衛···
高さも···申し分ない。
日向はずっと、エースに憧れて、エースになりたくてバレーを続けて来た。
···初めて烏野のエース、小さな巨人を見てからずっと。
でも日向は、漠然とエースになりたいと言っていて。
エースの仕事何たるか、までは···分かっちゃいない。
少なくとも、俺が今まで見てきたエースや、今ここにいるエースとは···到底比べモンにはならねぇ。
···日向はいつか、エースと呼ばれる日が来るだろう。
でもそれは、今じゃない。
まだまだ伸び代があって、発展途上で。
そんな立ち位置にいることに、日向···お前は気付いていないのか?
それとも、目を背けて···気付かないフリをしてるのか?
だったら···だったら俺が、今のお前の現実に気付かせてやる。
グッと手を握り、ネットに一歩近付く。
「あの。次コイツにトス上げるんで全力でブロックして下さい」
滝·旭「「 えっ?? 」」
滝「何だァ?挑発か?」
「はい、挑発です。ナメたマネしてすみません!」
謝りながら、俺はザッと頭を下げた。
滝「ははっ···面白れぇなぁ、お前。よっしゃ、挑発乗ったるぜ!」
「あざッス!」
···よし、まずはこれでいい。
繋「何考えてんだ。速攻はあくまで予測不能だから有効なんであって、手の内晒してブロックと真っ向勝負ってなったらチンチクリンに勝ち目ねぇだろ」
今は···そう、思わせておけばいい。
この作戦を成功させて、フワフワと浮き沈みの激しい日向の足を···俺がちゃんと地に着かせてやる。
うまく出来るかなんて、そんな余計な心配はしない。
俺なら、出来る。
俺だから、出来る。
···俺にしか、出来ない事だ。
自分で自分を奮い立たせ、まずは大きく息を吐き気持ちを整えた。