第28章 オトリの凄さ
影「試合中に余計なこと考えてんじゃねぇよ!!」
静まり返った体育館に、影山の更なる怒号が響く。
試合中に考え事···確かに、いくら練習試合だからとは言っても集中出来なかった日向君も···良くはない。
だから影山が言う事も分かる。
日「羨ましくって···何が悪いんだ元々デッカイお前になんか、絶対分かんないんだよ!」
澤「おい!」
終わりそうもない2人の言い合いを止めようと澤村先輩が割って入った時、ガラガラと音を立てながら体育館の扉が開けられた。
ー こらぁ、バレー部。そろそろ終了の時間だぞ。早く片付けを、 ー
あれは、用務員の···
武「すみません、この試合が終わるまで···」
ー でも時間が··· ー
武「僕が責任をもって閉めますので···」
用務員のおじさんと武田先生が話しているのが聞こえてくる。
でも、そんな事より···さっき突き放された事が、痛い。
お前は黙ってろ!···そう言われた事が、なんだか部外者は口を出すなと言われたみたいに思えて。
切ないため息を零しながら、目の前の菅原先輩のビブスを···キュッと掴んだ。
『何やってんだろ···私···』
菅「紡、ちゃん?」
ー じゃ ー
武「無理言ってすみません!」
澤「先生!すみません、ありがとうございます」
田「武ちゃんカッコイイ!」
澤「よし!じゃあ続き始めよう!」
澤村先輩のひと声で、日向君の所にいたみんなが自分の立ち位置へと戻って行く。
『スガさん、すみませんでした。続き、始まるみたいなので···』
菅「紡ちゃん?」
名前を呼ばれても、まともに菅原先輩の顔を見る事も出来ずに立ち上がり、私も自分の持ち場に戻った。
私···
私は···まだ···
部外者、なのかな···
不意に脳裏を掠めていくネガティブな考えに、足取りが重くなる。
マネージャーとしていろいろやってる事が、本当に意味があるんだろうか。
そんな挫けた考えさえ浮かんでしまう。
女、だから?
だから、男子の集団には混ぜて貰えないの?
じゃあ、どうして私はここにいるの?
グルグルと回る自分のマイナスな感情を振り払うように、何度も大きく息を吐き、頭を振った。