第28章 オトリの凄さ
澤「あぁ、分かった。、じゃ、その間は日向の代わりに、」
日「大丈夫です!ホントに大丈、ひっ···」
ひっ?
急に青ざめながら、日向君が息を飲んだ。
『どうしたの日向君?急に顔色が···やっぱり休憩取ろ、う??』
な···なに?
この、背筋が凍るような、いや、焼け付くような、猛烈な殺気···
その殺気立った気配が近付くのと比例して、日向君はどんどん顔色を悪くしていく。
私の背後に、いったい何が?
日向君の視線を辿るように、ゆっくりと後ろを振り返る。
『ひっ!』
思わず出てしまった声を隠すように、慌てて口を押さえた。
そこには···
凄い勢いで怒りの炎をメラメラとさせる···影山が立っていた。
影「なにボケっとしてた、試合中に···」
こ···怖いよ、影山?
その恐ろしさに日向君はガバッと起き上がり、ドンドン後ずさる。
日「あ、えっ、あ···」
言葉にならない声を漏らしながら日向君が下がれば、その分を詰めるかのように、影山がスタスタと前に進む。
なんか、ヤバイ···っぽい?
いつもだったら、なにボケっとしてんだこのボゲェ!!位に怒鳴って怒るのに。
それをしないって事は影山、マジ怒り?
だけど日向君は顔面に東峰先輩のスパイク受けたばっかりだし、何かケンカになりそうだったら間に入って止めないと!
『あ、あのね影山、落ち着いて?』
影「俺は知ってるぞ」
影山?
影「···エースはカッコイイけど、自分の1番の武器はオトリなんて、地味でカッコ悪い。自分に東峰さんみたいなタッパとパワーがあれば、エースになれるのに···」
私が感じた日向君の様子がおかしいってのは、そういう事だったんだ···
日「そ···そんなこと思ってない!くも···ない···ケド···」
影「エースがいるって分かってから、興味とか憧れの他に、嫉妬してただろ!」
日「う··」
嫉妬···って···
『ちょっと影山!』
それは言い過ぎなんじゃ、と割って入ろうと前に出た。
···のに。
影「お前は黙ってろ!!」
怒号と当時にドンっと押され、その予測していなかった力に体が流される。
菅「危なっ!」
西「おい影山!」
転びそうになる直前に菅原先輩が受け止めてくれたおかけで、床にご対面する事はなかったけど···
普段と違う影山に、胸が痛んだ。