第28章 オトリの凄さ
さっきから、日向君の様子が何かおかしい···とは感じていた。
何かある度に、暇さえあれば、東峰先輩の事ばかりジッと見ていて。
烏野のエースの復活を喜んでいる···っていうよりは、何か別の事を考えているようにも見えて。
···集中、出来ていない状態になってる感じがする。
1ゲームだけのミニゲームとは言え、上の空で続けていられるような内容ではないし。
日向君、しっかりしないと!
だけど、この日向君の感じ、何となく···何となくだけど、考えている事が分かる気がする。
でもそれは、努力したらどうにかなるような問題ではないし、日向君自身が飲み込んで超えなければならない···ひとつの壁。
···もし違ったら、元も子もない私の予想だけど。
澤「日向っ!!」
やばっ···私も日向君に気を取られてる場合じゃない。
集中しなきゃ、ちゃんとした判定が出来な···ええっ?!
突然起きた出来事に、思考が止まる。
東峰先輩が打ったスパイクを顔面に受け、大きな音と同時に日向君が飛ばされて···転がった。
『うそ···』
慌てて駆け寄るみんなと一緒に、私も日向君の所へと急いだ。
旭「ひ、日向~···」
ひと足出遅れて日向君の元へ着くと、東峰先輩が青ざめながら日向君の顔を覗いていた。
日「うぅ~···」
田「あ、生きてる」
西「大丈夫か?」
『そんな呑気なこと言ってる場合じゃ···』
月「今のはどう考えてもボケっとしてたコイツが悪いデショ」
それはそうかも知れないけど···でも、東峰先輩のスパイクをモロに受けたんだよ?!
武「きゅ···きゅ、きゅ、きゅ···」
繋「落ち着けよ、先生」
繋心の言う通りです、先生。
救急車を呼ぶ程じゃないと思います···多分。
でも、とにかく冷やすのは大事!!
そう判断して、救急箱から持って来た冷却ジェルを破裂させ軽く振った。
日「あっ···大丈夫です、すみません」
澤「ホントか?念の為に、休憩を···」
日「ホントに大丈夫です。ちょっと交わし切れなかっただけで、大したことは···顔面受け慣れてるし」
菅「慣れるなよ···」
あはは···確かに···
『日向君、とにかく冷やす事だけはしよう?大地さん、少しだけ時間下さい』
そう言って私は、冷却ジェルを日向君のおでこに当てながら澤村先輩の顔を見た。