第28章 オトリの凄さ
頭ん中に···昔テレビで見た試合が浮かぶ。
汗いっぱいで、苦しそうで、でも···小さな巨人は何回でも飛んでた。
あの時はよく分かんなかったけど、きっと、あれが仲間からの信頼ってやつだったんだ···
この人なら決めてくれると、チームのみんなが思ってたから。
···みんなが、あのエースに繋いだんだ。
そんできっと、今の旭さんも···それと同じだ。
影「おい···」
「エースすっげーな!!ブロックいてもいなくっても、あんな風にぶち抜けるなら、関係ないもんな!!
」
オレやっぱり···エースになりたい!!
···けど、あれ?
影山が何か変?
「なんだよ···?」
影「別に」
···変な影山。
大きく深呼吸して、ネットの向こうの旭さんを、何度も、何度も見る。
旭「レフトー!!」
あんな風な身長とか、パワーとかあったらオレも···
イヤイヤ!
小さな巨人は、小さいけど凄かったんだ!
けど···
いいなぁ···
澤「日向っ!!」
ヤバっ!!集中してなかった!
···と思った時には遅く。
既に目の前には旭さんが打ったボールが急接近して来た!
「ぉ···ぶぉぁっ···!!」
オレ···カッコ悪い···
ボールと一緒に吹っ飛ばされて···コートの中で倒れ込む···
痛みで滲んでくるぼんやりとした視界に、体育館の天井が映って。
でも···それよりも···
ボールが直撃した場所がズキズキと痛くて。
なんか、心が痛くて···
なんだろう、この気持ち。
どこにもやれない、気持ち。
誰にもぶつけられない、気持ち。
悔しいとか、そんなのとは、なんか違う感じの。
モヤモヤしてて、何だかよくわかんない感情が···グルグルしてて。
今までこんなにモヤモヤした事なかったのに、なんでだ?
城戸さんに話したら、レシーブ練習の時みたいに···何か教えてくれるかな···?
でもやっぱり、今はボールが当たった場所が痛い方が優先されていた。
オレ、何してるんだろう。
試合中に考え事とか、ないよな?
痛さと情けなさで動けないオレに向かって、いくつかの足音が近付いて来るのだけが、耳に入って来た。