第28章 オトリの凄さ
もしリターンされても、影山のトスがあれば、オレは!
そう思ったばかりなのに。
目の前で菅原さんのトスが上がり、旭さんがオレ達のコートにボールを沈めた。
島「おおっ!平行!」
田「1ヶ月ぶりでも···タイミングバッチリだな!チキショーめ···」
澤「田中···喜び過ぎ···」
エースの復活···それは、嬉しいんだけど···
なんだろう、この···なんか引っかかる感じ。
モヤモヤしたまま試合は続いて、点を取ったり、取られたりして。
町内会チームに追いつきそうで、追いつかなくて。
いま、ローテーションが動いて、オレの前には旭さんが来た。
オレは···エースになりたい。
小さな巨人みたいに、体が小さくたって···エースに、なりたい。
だけど、目の前にいるエースは···旭さんは···
オレよりずっとずっと背が高くて、体も大きくて、スパイクも凄くて···
オレとは全然違くて···なのに···
オレ今···エースをマークしてる···
烏野のエースと、戦ってる。
ー ナイッサー! ー
キャプテンのサーブを西谷先輩がレシーブする。
菅原さんがトスを上げて···旭さんにボールが!!
···止める。
止めやる!!
精一杯タイミングを合わせて、高く、高く飛ぶ!!
エースのスパイクを、止める為に!!
旭さんが腕を振り下ろし、スパイクを打ってくる。
止め···
「ぐぁっ···」
指全体に痺れるような衝撃が来る!
ワンタッチがギリ精一杯とか···クッ···
咄嗟にボールの行方を追ったけど、それはコートの外に落ちて行って。
···止めることさえ、出来なかった。
「すみませんっ!」
澤「ドンマイ!惜しかったぞ」
キャプテンは、そう···言ってくれた、けど。
凄い···1ヶ月ぶりのハズなのに···まだビリビリとする自分の手をジッと見つめて、そのパワーの凄さに圧倒される。
これが···エースのスパイク···
影「お前!ブロックの時、手の出し方が悪い!止めるつもりなら、こう!こうだ!」
すぐ横で影山がオレに何か言ってるけど、そんな事よりも今は、旭さんの凄さに圧倒されて···耳に入らない。
影「聞いてんのか??···こうだ!···オイッ!!」
エースのスパイク···それは、オレのとは威力も何もかもが。
···違った。