第27章 小さな太陽と大きな背中
頭の片隅でいろんな事を考えながらも、ゲームの流れからは目を離さない。
今も日向君かスパイクを決めて、烏野チームに点が入った。
田「ナイス日向!」
日「アザーっす!」
影「日向、次サーブ···」
影山のトスも日向君のスパイクも、普段と変わらず絶好調っぽい。
コンビプレイも町内会チームの人は驚いてたし。
ただ、コッチ側にいるとよく分かる。
日向君はボールを見ずに打ってくるから、コースの打ち分けまでは完璧じゃない。
何度か見て研究とかされたら、西谷先輩じゃなくても拾うことは出来てしまう。
まだまだ、これからって感じなんだろうなぁ。
みんながそれぞれ、いろんな事を乗越えて上達するのを間近で見て、私もそれを応援しながら吸収して。
吸収···?
私は、吸収してどうしたいの?
また···コートに立ちたいの?
それはきっと、ない。
···と、思う。
フルフルと軽く頭を振って、意識を今に向ける。
「···思うよ」
東峰先輩···?
西「え···?」
「何回ぶつかったとしても、もう1回···打ちたいと思うよ···」
ポツリと小さく、でも、力強く話す東峰先輩の言葉が聞こえて来る。
西「それならいいです···それが聞ければ、充分です」
そして、それに応える西谷先輩の声も。
何回ぶつかったとしても、打ちたいと思う。
東峰先輩の言葉が、ツンとした痛みを誘う。
あの日、あの公園の丘で話した時とは別人の様なしっかりとした目をした表情は、今まで悩んで、迷って、やっと自分の道標を掴んだようにも思えて。
···胸がいっぱいになった。
ここには、小さいけれどとても輝く太陽がある。
その輝きはいつでも精一杯に自分の存在を明らかにしていて、誰よりも輝いて。
そして、その光はとても心優しくて大きな背中を照らし続けている。
時には陽だまりのような暖かさで。
時には灼熱のような熱さで。
これからまた、新しい気持ちで道を切り開いて行くんだと思える、信頼の深さで。
大きな体で、小さな一歩を踏み出した東峰先輩。
大きな心で、小さな一歩を受け入れた西谷先輩。
私は少しずつ滲んで行く光景を、心に焼き付けて置きたいと、何度も瞬きを繰り返した。