第27章 小さな太陽と大きな背中
繋「んじゃ、始めっか!」
繋心の声で、みんながコートに入る。
もちろん私も所定の位置に立ち、コートを全体的に見回す。
ラインズは私だけだけど、とりあえずは烏野チーム側からの攻撃判定をしっかりやらないとだから。
私の立ち位置からは、烏野の守護神と呼ばれる西谷先輩、エースと呼ばれる東峰先輩の背中が見える。
それから、誰より自分を責めてきた菅原先輩の姿も。
みんなの行く末を、しっかり心に刻みたい。
いろんな思いを抱えて、悩んで、迷って。
やっとここまで歩み寄れた3人の気持ち。
私はいま、凄く大事な場面に寄り添えている気がする。
烏野チームからサーブが打たれ、それを西谷先輩が当たり前のようにしなやかに拾う。
···やっぱり、西谷先輩のレシーブはキレイだ。
そのボールを菅原先輩がトス上げをして、町内会チームの人かスパイクを打った。
菅原先輩のトスだって、決して影山に劣っている訳じゃない。
キレイなフォームで、正確で。
なのに、どうして影山と並ぶとあんな風に···
影山は良くも悪くもいつも王様で。
···威張りんぼで。
それは私と日向君にだけかな?
それに対して菅原先輩は、どこか控えめな···
スキンシップは盛大だけど。
何度もふたりの姿を見比べて、ひとつの答えに行き着く。
菅原先輩に足りないのは···自信なのかも知れない。
足りないっていう表現が正しいとは思わない。
けど。
少なからず東峰先輩の事がきっかけで、前に出るっていう気持ちが抑えられていたのかも知れない。
さっき···自分でも言ってたし。
菅 ー セッターはチームの攻撃の軸だ、1番頑丈じゃなくちゃいけない。オレのトスで、またスパイカーがブ何度もブロックに捕まるのが怖くて、圧倒的な実力の影山の陰に隠れて···安心、してたんだ ー
あれは、ずっと菅原先輩の胸に刺さってた···小さなトゲ、なんだと思う。
どうにかしたくてもがいても、チクチクと痛んで自分でもどうしたらいいのか分からない痛み。
普段あんなにもにこやかに笑っている裏側では、その痛みに耐えていたのだと思うと、それはそれで胸が痛む。
ひとりで痛みに耐える辛さは、私にも···分かるから。
でも、今日からはきっと何かが変わる。
私は、そう信じてあげたい。