第27章 小さな太陽と大きな背中
繋「···取って食いたいなら、命懸けになるからな」
命懸け?
嶋「見てるだけならイイだろ?な、お嬢ちゃん?」
キラリと眼鏡を光らせながら、嶋田さんが私に視線を流す。
『は、はぁ···』
嶋「それとも?取って食われてみたい?」
······?
新手のナンパ?
しかも···ここで?
繋「だァァァっ!やめとけってーの!コイツのアニキはブラックツインズだぞ!!」
『またそんなこと言って!』
嶋「え、ウソ···?」
『え?』
繋心のひと言に、さっきまでキラキラ生き生きとしていた嶋田さんが···まるでバッテリー切れのロボットのようにぎこちなく私を見る。
繋「だから!コイツの名前は城戸紡!アニキは双子で!桜太と慧太!聞き覚えあんだろ?!」
嶋「···ウソでしょ?」
『確かに兄の名前はそうですけど···でも、ハゲつる繋、ングッ···』
ハゲつる繋心の由来も話しちゃおうとすると、繋心が手で私の顔を覆う。
嶋「繋心、マジ?それとも軽いジョーク?」
繋「本気と書いて···マジだ。オレもさっき思い出した」
本気と書いてマジだとか、どうでもいいから···とりあえず苦しいよ!
澤「すみません、準備出来ました!」
もがもがとしながらもがいていると、澤村先輩が来てミニゲームの用意が出来たと報告に来た事で、やっと解放されゴホゴホとむせた。
澤「···生きてる?」
止まらない咳き込みに背中をさすりながら顔を覗かれ、ウンウンと頷いて見せた。
『はぁ···死ぬかと思った···ハゲつる繋心め···』
澤「生きてるならよかった」
いつものように澤村先輩が笑い、私は笑い事じゃないですよ!と軽くツッコミを入れながら旗を伸ばした。
澤「紡がラインズかぁ、凄くチェックが厳しそうだな?」
『厳しいかどうかは分かりませんけど、でも···ミニゲームでも、何でも、真剣勝負です』
澤「そうだね。特に今日は、本気でやらなきゃ意味がないメンバーが揃ってる」
チラリと東峰先輩や西谷先輩に視線を送りながら澤村先輩が呟いた。
東峰先輩の決意は、まだ揺らいでいるかも知れない。
だけど、体育館へ来た事はみんな受け入れてる。
あとは全員が本気でぶつかり合うことが大事だと思う。
私はそんな事を考えながら旗を握り締め、ゲームが始まるのを待った。