第27章 小さな太陽と大きな背中
~西谷side~
久々に旭さんのいるコートに立って、全身がザワつく。
これがオレの立ち位置だと。
ここが、オレの居場所だと。
大事なことを教えてくれる···大きな背中に、ジッと視線を預ける。
何度もぶつかって、答えはまだ···貰ってねぇけど。
それでも、旭さんの背中があるってだけで気合いが入る。
今はまだ、来てくれただけで···いい···
旭「···思うよ」
「え···?」
旭「何回ぶつかったとしても、もう1回···打ちたいと思うよ···」
「それならいいです···それが聞ければ、充分です」
あぁ、そうだ。
それだけで充分だ···
ずっと欲しくて、ずっと待っていて···やっと届いた旭さんの···声。
旭さんが振り返るのが分かったけど···オレは、向こう側のコートに立つ翔陽に目を見据えたまま···小さく笑って見せた。
ギュッと目を閉じて、集中力を上げる。
目を開ければ、そこにはいつもと変わらない···コートの中で。
ー 日向ナイッサー! ー
そこには、サーブを打とうとボールを上げる翔陽がいて。
ー ネットイン!! ー
島「おっと!···すまん!カバー頼む!!」
ー ロン毛の兄ちゃん!ラスト頼む! ー
視界の端に、躊躇いながら動き出す旭さんが映る。
旭さん···!
空はスパイカー達の領域でオレはそこで戦えないけど···
影「止めんぞ!」
月「命令しないでくんない?」
田「本気で行くッス···旭さん···」
繋げば···繋いでさえいれば···きっとエースが、決めてくれる!
目前で旭さんが腕を振りかぶる。
久しぶりに見る···旭さんのスパイク···
でもそれは、影山の手でブロックされた。
クソっ!!
考えるより先に体が動き出す。
落とさねぇ···落とすワケには行かねぇ!!
···絶対、エースへと繋ぐんだ!!
嶋「おおっ!上がった!!」
「壁に跳ね返されたボールも、オレが繋いでみせるから···だから···だからもう1回!トスを呼んでくれ!エース!!!」
オレが拾ったボールが、高い高い弧を描いて···ゆっくりと空へ上って行った。