第27章 小さな太陽と大きな背中
~東峰side~
静かに、そして大きく息を吸って、体育館の空気を肺いっぱいにに取り込む。
自分の中に封印してしまった匂いが、体中を巡っていく。
そして、黙っていても聞こえて来るのは···
シューズが床を擦る音、ボールが弾ける音···随分と懐かしく聞こえてしまう程、オレはバレーから離れていたんだと自覚してしまう。
ミニゲームが始まって、西谷が拾い、スガがトスを上げて···そして、今。
町内会チームの、メンバーがスパイクを決めた。
ー おうっ、イイ感じイイ感じ!ナイストス! ー
菅「あ、ありがとうございます!」
久々に目の当たりにする、スガのトス。
スガも···なんか生き生きとして見える。
日「スガさんの速攻···」
澤「そりゃお前、スガだってれっきとしたセッターなんだからな!」
ネットの向こう側で、大地が嬉しそうに言っているのが聞こえてしまう。
ちょっと前までは当たり前のようにオレもあの中にいて···一緒に戦って···だけど、今は···
西「スガさん!ナイストス!」
菅「あぁ!···つっても、町内会チームの人達が上手く合わせてくれてるんだけどなぁ。さすがベテランって感じだ。オレ自身のトスはまだまだだよ。でも、速攻もどんどん使って強気で攻撃組み立てて行かないと、またエースに頼りっきりの試合になっちゃうからな」
西「スガさん、カッチョ良くなったッスね」
菅「えっ?そう?西谷に言われると何か嬉しいな」
西「なんでですか?」
スガ···ちょっと見ないうちに頼もしくなった。
西谷の頼もしさは相変わらずだ。
なのにオレは、ふらふら戻って来て、成り行きだけでコートに立ってる。
···情けないと思う。
けど···けど···やっぱり···ここが好きだ!!
そう自覚して、コートの隅にいるあの子に視線を移す。
ラインズの旗をクルクルと回したり、掲げてみたり。
そんな仕草をしながら、コートの中の様子を見ている。
そこにいる、それだけを確認する事で、ホッとしてる自分に乾いた笑いが零れる。
東峰先輩は弱くなんかない。
あの時の言葉を思い出しながら、さっきパシッとされた場所にをあてながら、ひと月前の出来事を思い出していた。