第27章 小さな太陽と大きな背中
繋「あとはセッターか、オレやりてぇけど外から見てなきゃだしなぁ。お前らの方から、セッター1人貸してくれ」
ポツポツとボヤくように繋心が菅原先輩と影山に顔を向けた。
2人ともセッターではあるけど、いったいどっちが···?
そう思いながら2人を見ていると、菅原先輩が意を決した顔をして一歩前に出た。
影「菅原さん!俺に譲るとかじゃないですよね。菅原さんが引いて俺が繰り上げ、なんて···御免ですよ」
影山?
菅「オレは···影山が入って来て正セッター争いしてやるって思う反面、どっかで、ホッとしてた気がする。セッターはチームの攻撃の軸だ、1番頑丈じゃなくちゃいけない。でもオレは、トスを上げることに、ビビってた。オレのトスで、またスパイカーがブ何度もブロックに捕まるのが怖くて、圧倒的な実力の影山の陰に隠れて···安心、してたんだ」
菅原先輩に対して、どこかで感じてた違和感があった。
それは、この事だったんだ···
青城との練習試合の条件を聞いた時、反論するわけでもなく、悔しがる訳でもなく。
あの時、菅原先輩は···あっさりと身を引いた。
でもそれは、影山と日向君のコンビ攻撃がどのくらい通用するか見たいって言うこともあったけど···何となく、その時の菅原先輩に違和感を感じてた。
菅「スパイクがブロックに捕まる瞬間を考えると、今も怖い。けど、もう1回オレにトスを上げさせてくれ、旭!···だからオレはこっちに入るよ。影山、負けないからな」
影「俺もッス」
菅「西谷、ナイスレシーブ頼むよ!」
西「当然ッス!!」
小さな亀裂が埋まっていく瞬間に···立ち会えた気がする。
広がってしまった隙間が、少しずつ···埋まる。
日「旭さん来たな!···なっ!」
影「あぁ···とりあえずな」
ざわめくギャラリーに囲まれて、東峰先輩は1点を見つめた状態で···まだ、立ち止まったままでいた。
怖いのは、わかる。
でも、それでも、ここまで来る事は出来た。
あと···少し。
『ハゲつる繋心~!私ラインズやってもいい?!』
繋「だからそれで呼ぶなっつんだよ!」
わざとらしく大声で言って駆け寄りながら、追い越し様に東峰先輩の背中をパシッとタッチした。
絶対、大丈夫だから!
そんな、思いを込めて。