第27章 小さな太陽と大きな背中
~東峰side~
少しだけ···ほんの少しだけ重い足取りで体育館の前まで来る。
開けてある窓、開けてある扉から聞こえて来るざわめきに、足が止まりそうになる。
やっぱり···今日はやめて、明日からに。
ここまで来て怯んでいく気持ちに、負けそうになる。
けど。
日「あっ!旭さんだ!」
えっ?!
思わず声のする方を見ると···ひ、日向?!
日「旭さぁ~ん!!」
「げっ···またコイツ···あ···オレは···その···」
別に何でもないから、と言い訳をしようとしてモゴモゴと口篭っていると、体育館の入口からザッと人影が出て来て···
繋「何だ遅刻か?!ナメてんのか?!ポジションどこだ!!」
「ウ···ウイング···スパイカー···」
急に現れた人物と、矢継ぎ早に掛けられる言葉に怯みながらも答えてしまった。
繋「人足んねーんだ、さっさと入ってアップ取れ!スグスグ!!」
ーー誰だいまの?!
いや、そんなこと考えてる場合じゃない。
今のでオレがここにいる事が···みんなにバレてしまった。
どうやって···中に入ろうか。
どんな顔して···入ればいいんだ?
これまでに何度も何度も繰り返した事が頭の中を巡る。
破裂しそうな心臓に、呼吸さえ苦しくなる。
ここまで来て、やっぱり···なんて言ったら怒られる、よな?
大地に。
スガに。
西谷に。
そして、誰より···あの子に。
そんな事を考えながら、体育館の扉にゆっくりと手をかけ···視線を中に向ける。
こ、怖い···
みんながオレを見て黙っている。
大地が···
スガが···
西谷が···
緊張のあまり、視線を足もとに落とす。
扉にかけた手が···震えて来る。
ー 東峰先輩、頑張れ! ー
どこからか声が聞こえて来た気がして、もう1度顔を上げる。
その目線の先にはあの子の姿があって。
オレと目が合うと···小さく、ニコリと笑った。
なんだ?
この不思議な感じは。
あの子の笑顔を見ただけで、震えていた手が···止まった。
不思議な感覚にもう1度あの子を見ると、今度微笑みながら小さく頷いている。
その柔らかい微笑みに引き寄せられるように、オレはいつの間にか体育館の中へと吸い込まれて行った。