第27章 小さな太陽と大きな背中
旭さんがいないのに、試合なんて出来ねぇよ。
それが例え練習試合でも。
みんなが準備しているのが分かっていても、足が···動かねぇ。
視線を感じて顔を上げれば、コーチがオレを見ていた。
繋「何だお前、どうした?」
どうした?って言われても、なんて答えれば···
澤「あ···すいません、そいつはちょっと···」
大地さん···
コーチの言葉に気付いた大地さんが、オレとの間にはいってくれる。
繋「何だ?ワケありか?ケガか?」
澤「あ、いや。そういう訳じゃないんですけど···」
繋「何だよ、ケガじゃねぇの?よく分かんねぇけど、町内会チーム入ってくれよ?こっちのリベロ、仕事で来られないんだよ」
町内会チームのリベロ···
澤「あ、それなら···」
そう言いかけて、大地さんがオレをチラッと見た。
旭さんがいないチームなら···そう思って、大地さんに目配せをしてから、オレは町内会チームのコートに足を踏み入れた。
繋「あと2人かぁ···どーすっかなぁ。そっちまだ何人かいるよな?」
配られたビブスに手を伸ばすと、まだ人数が足りないとボヤくコーチの話が聞こえて来る。
ここへ来たメンバーが、どのポジションなのかは分からねぇ。
でも、人数が足りないなら木下や成田や山口だっている。
日「あっ!!旭さんだ!!」
翔陽···今···なんて···?!
菅「えっ?」
田「旭さん?!」
旭さん、って···言ったのか?
日「旭さーーーーん!!」
窓柵によじ登りながら外を見る翔陽が旭さんと呼ぶ声が、今度はハッキリとオレにも聞こえた。
旭「ゲッ···またコイツ···あ、オレは、その···」
···旭さん!!
壁の向こうから聞こえた声に大きく息を飲み、オレは今までにないくらいの勢いで振り返った。