第27章 小さな太陽と大きな背中
私と菅原先輩を驚かせた内容は、私にうまく出来るかな?と思うような内容だった。
澤「今から紡とスガにトス上げて貰うんだけど、いつもみたいに打ちやすいトスじゃなくて、打ちにくいトスを上げて欲しいんだよ」
『それってどういう?』
澤「練習だと、上手くスパイク打てるようにトスくれるだろ?でもホントの試合中は必ずしも、」
菅「ドンピシャのトスばかりが上がるわけじゃない、って言いたいんだろ?」
澤「あぁ、さすがスガ」
なるほど、でも。
『それなら私なんかより、影山の方がいいと思いますけど?だって、私、試合になったらコートの中にはいませんよ?』
澤「スガと紡がいいんだ、この役目は」
『どうしてですか?』
菅「あ。オレ、ちょっと分かっちゃったかも。オッケー、大地の指示に従おう。行くよ、紡ちゃん」
『スガさん?』
いいからいいから、と言いながら私の手を引いてるその場を離れる。
どうして、私や菅原先輩の方が適役なんだろう。
ネット際まで来て、菅原先輩が足を止める。
菅「影山は、さ。だいたい失敗なんてしないだろ?誰にだって、いつだって、正確なトスを上げる事が出来る」
『まぁ、そう···かな?』
菅「だから大地はオレ達にって、言ってるんだと思うんだ」
『ヘタクソって、事ですか?』
そりゃあ、影山に比べたら私なんて足の爪先にも及びませんけど。
菅「そうじゃなくて、わざと打ちにくいトスを上げるなら影山にはそれが難しいって事だよ。影山は賢いから、トスひとつ上げるにも計算して上げる。どんなに必死な場面でも、必ず。だけど、オレはトスひとつにそんなに計算なんか出来ない」
『そんな事は、』
菅「あったんだよ、実際。とにかくトスを上げてスパイカーに繋げたい。ただ、それだけの気持ちでトスを上げる事が、ね」
それは東峰先輩とも関係があるんですか?
そう聞こうとして、やめた。
だってこんなにも傷付いた目をした菅原先輩を···見た事がなかったから。
いつもはおちゃらけて、どさくさ紛れに抱き着いてきたりして、清水先輩に鉄槌を下されてもニコニコしてたのに。
ここにも、胸を痛めたプレーヤーが···ひとり。
目を閉じて、深呼吸する。
『やりましょう!ヘタッピトス作戦!』
バシンと菅原先輩の背中を叩いて気合を入れた。
今は、そうするしか出来なかったから。
