第27章 小さな太陽と大きな背中
『じゃあ、繋心?』
ちょいと小首を傾げながら、オレを伺うようにサラっと呼び捨てされる。
「なんで呼び捨てなんだよ?!」
『だって!他に呼び方ないし!』
「あぁもう!めんどくせぇ!それでいいよ、それで!」
じゃあ繋心でいいんじゃん!と小さく拗ねて、その顔でふと思い出す。
コイツそう言えば、昔もオレを呼び捨てしてたな。
桜太は烏養、慧太は繋心。
あの二人の影響と、ジジィがオレを呼ぶのを真似て、呼び捨てだったな。
あと、ハゲつる繋心な。
ハゲハゲ言いやがって、坊主頭だっつーの!!
全く···見た目もちっこいまんまだが、中身も変わってねぇな。
そんなオレ達を見て、先生ともう一人の女子マネージャーが仲良しだクスクスと笑う。
やれやれ、と息を吐いた所で練習を始めていた主将がチビ助を呼んだ。
澤「紡!中に入ってボール上げてくれ!」
『あ、はい!今行きます!』
今、ボール上げてくれ?って言ったか?
澤「スガと紡でトス上げてくれ。西谷は反対側でひたすらレシーブ。残り全員はスパイク練習で!」
ちょいちょいちょい!
ここは男子バレー部だろっ?!
大丈夫なのか?!
「先生、あのチビ助···呼ばれるままにコート入ってっけど?」
オレの目の前でケガでもされたら居心地悪いと思って、隣で見守る先生に声をかけた。
武「あぁ、城戸さんですか?大丈夫ですよ。僕も最初は驚きましたが、たまに紅白戦に混ざってるくらいですからね」
「はぁっ?!危ねぇだろ?!アイツは一応女子だろ?!しかも小人だぞ?!」
武「小人って、烏養君···でも、大丈夫です。ね、清水さん?」
清「はい。彼女は大丈夫です···とも、言いきれない危うさもありますけど」
ふふっ···と笑いながら、見守る様にコートに目を向ける。
危うさあるんじゃねーか!
コーチ就任最初の仕事として、止めるべきか。
それとも、見守るべきか。
戸惑うオレの気持ちをよそに、スパイク練習の準備が始まった。