第27章 小さな太陽と大きな背中
「そう言えば、7、8年前に音駒でセッターをしていた方が、今コーチをされているそうですよ?」
この言葉で、烏養君の顔色が変わった···気がする。
「ちょうど烏養君も現役の頃だから、もしかしたら顔見知りかも知れないですね」
烏「オイ···」
···ん?
あれ?
僕はなんで烏養君に掴み上げられて···?
烏「煽ってんのかテメェ~!」
「うぁぁ···す、すいません!」
烏「ふざけんなっ!そんなあからさまに煽られてな、オレが乗っかると思ってんのか?!練習何時からだコラァ~!」
むちゃくちゃ怒り出した!!
「すいませんっ!すいませんっ!!」
烏「あの音駒が来るっつーのに、みっともない後輩見せてたまるかっ!···着替えて来る!待っとけ!」
「はいっ!」
やった!
やりましたよ、澤村君!
これで君達にちゃんと指導してくれる人材を掴み取りました!!
烏「母ちゃん、店番頼む」
何度も何度もここへ通って···
やっと···やっと動いてくれた!
「よしっ!」
自分への頑張りと、彼らのこれからの事を考えて気合いを入れる。
烏「あ~、もしもし?たっつぁん?」
···ん?
烏養君が誰かに電話をしているようだけど、取り敢えずは···気にしない。
もし今、僕が何かを言って、烏養君の気が変わってしまったら、困りますから。
ほっと息をついて、お店の前の自動販売機に背中を預ける。
僕にはバレーの知識も経験もない。
だから、部活動顧問とは言っても名ばかりで。
だけど···これで少しは、顧問らしい事···出来た気がする。
まだまだ、足りないけど。
それでも僕は彼らの為に、どんな事でも頑張ろうと思ってますから。
どんな小さな事でも、頼りにしてくれたら···
そんな事を考えながら、烏養君が出て来るのを待っていた。