第27章 小さな太陽と大きな背中
~澤村side~
体育館に近付くにつれて、ボールの音が聞こえて来る。
日向と影山だな?
アイツら、ほんっと部活好きだな。
それにいつも、張り切ってるって言うか···その元気とやる気と張り切りが、旭にもあれば···
小さなため息を吐き出しながら顔を上げれば、体育館の入口へと続く渡り廊下に旭が立っていた。
旭···もしかして···?
声を掛けようと旭に近付くと、スパイクを打つ音が大きく聞こえた。
日「よっしゃぁぁぁ!対ネコ戦も速攻決めんぞー!!」
ははっ···日向は誰より元気だな。
旭「···ネコ···」
「ゴールデンウィーク最終日に、練習試合なんだ」
音駒との練習試合がある事をいいながら、更に一歩、旭に近付いた。
旭「···ゲッ!」
俺の声に驚いたのか、振り返った旭は目を丸くして渡り廊下の柵を越えようと···ん?
いま旭、ゲッて言わなかったか?
「ゲッ、て···おいっ!逃げるな!」
旭「だってお前、怒ると怖いんだもん···」
「いま別に怒ってないだろ!」
何でいつも俺は怒らせると怖い人みたいに言われるんだ?
いつだって誰とでも普通に接してるのに。
「···ま、俺達からすれば、音駒の事って昔話みたいな感じで聞いてたし。今の代の音駒と烏野に、何か因縁みたいのがある訳じゃない。でも、ネコ対カラス、ゴミ捨て場の決戦!···よく話に聞いてたネコと今、俺達と数年ぶりに再戦ってなると···ちょっとテンション上がるよなぁ」
これに関しては、武田先生の頑張りに感謝だな。
暫くのあいだ鳴かず飛ばずだった烏野に、こんな風に凄い練習試合の相手を作ってくれて。
青葉城西の時は、セッターとして影山を出せってのが条件だったけど···それでも、そこまで取り次いでくれたのは武田先生だからな。
本当なら、スガをセッターとして同じコートで···とも思ったけど。
スガはスガなりにいろいろ考えて、その条件を飲んだ。
傍から見たら、3年なのに···とか言われてるかもしれない。
だけど、スガはそんな外野からのヒソヒソ話で潰れる様なヤツじゃない事は、ずっと一緒にやって来た俺には分かる。
安心して、いろんな事を任せられる立派な副主将だ。
···たまにセクハラだけどな、紡に。
そう、紡にな。
旭「けどオレは···スガにも西谷にも、合わせる顔がない···」
