第27章 小さな太陽と大きな背中
なに···この惨状···
空き巣が入った、とまでは言わないけど。
普段なら到底有り得ない光景が、いま、私の目に飛び込んで来る。
たまに早く目覚めた朝。
桜太にぃが休みなのは知ってたから、時間を確認して···よし!先に朝ごはんの準備とかして驚かそう!
なんて息巻いてリビングのドアを開けてみれば。
散らかったキッチン。
何やらよくわかんない事が走り書きしてあるメモが散乱するテーブル。
と、その周り。
何気なく1枚を拾い上げ目を落とせば、人数は何人かだとか、肉は何キロいるだとか、野菜は大事とか、焼きそばとカレー···桜太にぃの字で走り書きされている。
何これ?
病院職員で、バーベキューでもするのかな?
そして···周りをよく見れば。
酔っぱらいが2人、ソファーの両端に転がっている。
···いったい昨夜、ここで何があったんだろう。
慧太にぃが飲み過ぎてそこかしこに転がっているのは頻繁だし、見慣れてる。
部屋を間違えて、私のベッドに一緒に寝てた事もあったし。
それ故に、私の部屋に鍵が付けられたんだけどね。
だけど、驚くべくは。
···桜太にぃまでが、ソファーで寝てしまっているということ。
正確には、酔い潰れてしまっている···の方が正しいのかな?
早起きしたから驚かせようと思っていたのに、逆にこっちがビックリだよ。
なんにせよ、この散らかった部屋を片付ける所から始めないと。
大きなため息を吐き出しながら1度リビングを後にして、それぞれの部屋から毛布を運びそっと掛けた。
なるべく音を立てないように手早く片付けをして、きっとあんな風になるまでお酒を飲んでいるのなら、まともな朝ごはんなんて食べられないだろうと、また小さくため息を吐く。
私ひとり分の朝ごはんと、ふたり分のミルクリゾットを仕上げる直前まで作り、それからお弁当を詰めながら、キッチン脇に設置されているホワイトボードの予定を見る。
桜太にぃは休みだけど、特に予定も書いてない。
慧太にぃも今日は午後からの出勤か···
あのまま放置、決定だね。
起きた時に常温ですぐ飲めるように、冷蔵庫からミネラルウォーターのペットボトルをテーブルに置き、カップも並べる。
片付けたメモ用紙から1枚を取り、簡単にメモを残して私は朝練に参加する為に家を出た。