第27章 小さな太陽と大きな背中
~慧太side~
日向に、桜太のおまじないをかけた···だと?!
オレは山口って方はイマイチよくわかんねぇケド、日向と連名で名前が出るあたり同じバレー部のヤツだろう。
斜め上からのカミングアウトに、思わず言葉に詰まる。
『えっと私、何かまずい事でもした?』
一瞬で変わった空気に気付いたのか、紡がモゴモゴとしながらオレと桜太を交互に見る。
何かまずい事でもした?って···そりゃあよ···
···してるよなっ?!
っつーか、何してくれてんだ日向は!
いや、何されてくれてんだ日向は!の方が正解か。
桜「······」
見てみろ、桜太なんて固まってるじゃねぇか。
···オレ的にはまぁ、面白ぇケドな。
『だ、だって、あのね?日向君はガチガチで右手右足が一緒に出ちゃうし!お腹痛くなって大変だったし!それに、山口君も似たような感じだったし?!』
何も言わないオレと、何も言えない桜太に紡が一生懸命に弁明を始める。
「つまりお前は、その2人に···桜太と同じようにおまじないをした、と?」
わざとらしく顎に手を当てて考える素振りを見せて紡に問えば、特に何も言わずに首だけを縦に振った。
な~るほどねぇ。
ま、オレとしてはチョイと面白くはない展開だが?
自由人の慧太サマとしては~、だ。
今のこの現状を楽しませて貰うとすっかな?
電池が切れたロボットのように動かない桜太をチラリと覗き、その遠くを見る目に笑いが込み上げる。
「···だ、そうですよ?ア~ニ~キ?」
これまたわざとらしく、普段は言わない呼び名で声をかければ、どこか遠くへ行きかけていた桜太がハッとして瞬きを繰り返した。
桜「えっ···と?お腹、空いた···かな?慧太、ご飯出来た?」
は?
飯?
いや、飯は出来てるけどよ?
この会話の成り行きで、いきなり飯の話?
「現実逃避しやがったな」
ホント、桜太は紡に関しては面白ぇ。
桜「さぁて、紡。ご飯食べようか?たくさん食べて大きくなりな?」
さっきまでのやり取りを、まるでリセットしたかのように桜太はそう言いながらソファーから立ち上がり、テーブルへと歩き出す。
楽しい時間は終わりか?とオレも背中を向けようとした時、ガツンと音がして目をやれば···
音の元には膝を押さえてうずくまる桜太の姿が見えた。