第27章 小さな太陽と大きな背中
売り言葉に買い言葉、という訳じゃないけど。
つい、桜太にぃのおまじないは凄いんだよ?!っていう位の気持ちで言ったんだけど···
慧「日向···?」
桜「···山口君?」
···あ、あれ?
私、なんか変なこと言ったかな?
一瞬で静まり返るリビングの空気に、何となく居心地の悪さを感じて来る。
桜「山口君···って。この前、俺が体育館で応急処置した子だったよね?ちょっとおとなしい感じの?」
『そう、だけど?···えっと私、何かまずい事でもした?』
慧「···」
桜「······」
この2人の反応からして···したみたいね、私。
『だ、だって、あのね?日向君はガチガチで右手右足が一緒に出ちゃうし!お腹痛くなって大変だったし!それに、山口君も似たような感じだったし?!』
慧「つまりお前は、その2人に···桜太と同じようにおまじないをした、と?」
まぁ、そうですね···と、言葉には出さずに首を縦に振った。
慧「···だ、そうですよ?ア~ニ~キ?」
ニヤリとしながら慧太にぃが言うも、桜太にぃは心ここにあらずな状態で乾いた笑いを零した。
桜「えっ···と?お腹、空いた···かな?慧太、ご飯出来た?」
慧「現実逃避しやがったな」
桜「さぁて、紡。ご飯食べようか?たくさん食べて大きくなりな?」
言いながらソファーから立ち上がり、テーブルへと歩き出す。
『桜太にぃ、なんか変?どうしたの?』
桜「どうもしないよ?俺は至って普通···痛っ!」
歩きながらテーブルの脚に膝をぶつけ、しゃがみ込む姿を見て慧太にぃが盛大に笑い出した。
慧「つ、紡?···そっとしとけ···」
息も絶え絶えに慧太にぃが言って、そのままキッチンの奥へと消えて行った。
『桜太にぃ、大丈夫?やっぱり変だよ?』
桜「大丈夫···ちょっとよそ見してただけだから」
『なら、いいけど』
いくつか浮かぶ疑問符に首をかしげながら、私は慧太にぃの手伝いをすべくキッチンへと足を向けた。