第10章 烏野高校男子バレー部
大地はスクイズの残量を確認すると、またそれを口にしながら、それで?と話の続きを促す。
「紡ちゃんが俯きながら涙を拭いているのを見てたら、こう、なんか胸の奥がムズムズして・・・気がついたら、抱きしめてた・・・」
ゴボッ・・・とがして、大地が盛大にむせコケている。
あれ?と思って周りを見ると、田中を筆頭に他の部員達までがアチコチに飲料こぼしながらタオルで口元押さえてむせていた。
澤「だ、だっ、ゴホッ、ゴホッ・・・抱きしめてたってなんだよ?!?!」
「だから大地、声がデカイって・・・って、もう手遅れか・・・」
コッソリ話すつもりが部員達に丸聞こえだった事に気が付き諦める。
縁下なんて、まだ死にそうな位にむせてるしね。
澤「お前、また何でそんな事を・・・」
ようやく呼吸が整った様子の大地が、更に突っ込んで聞いてくる。
田「スガさん・・・なんて、なんてハレンチな!」
「ハレンチとか言うな!恥ずかしいだろ!オレだって何でそうなっちゃったか分かんないんだからさっ」
澤「スガ・・・ちょっと確認するが、その~、アレだ、うん、お前、その後どうした?」
「え?その後?えっ・・・と、気がついたら抱きしめちゃってて、悲しい事を言ったなら何度でも謝るから、だからもう泣かないでよ・・・って言って、頭をポンポンしただけだけど?」
田「や、やっぱりハレンチ行為じゃないっすか!くぅぅぅ、我らが潔子さんにもそんな事してみたい!!」
澤「田中はちょっと、向こう行っとけ。ほら、早く」
体をクネクネさせながらおかしな妄想を始める田中を追いやってから、大地がオレの肩を掴む。
澤「スガ・・・。お前がパッと見爽やかな優しいだけの男じゃないってことは、よーーーーーーく分かった。」
「大地はオレを、そんな風に思ってたのか」
澤「いいからよく聞け。どんな状況からそうなったのかはイマイチよく理解できないが、お前、明日もう1回よく謝ってこい!これは部長命令だからな!分かったな!」
怖い顔して何度も大地に念を押され、分かったから!とだけ返して、オレは明日の事を考えて、今日何回目かという大きな溜息を吐いた。