第10章 烏野高校男子バレー部
気がついたら、紡ちゃんを腕の中に閉じ込めていた。
日向に声をかけられて、そこで初めてオレは何してたんだって慌てた。
その後すぐに予鈴がなり、午後の授業が始まったけど・・・そんなのはもう、頭に入るわけもなく。
オレは部活の休憩時間に、大げさだと思われるくらいの溜息吐いた。
澤「おいおい、なんだか盛大な溜息だったな?なんか悩み事か?」
隣でスクイズを飲みながら、大地がこっちを見た。
澤「お前、昼休みの後から、なんか様子がおかしかったし。俺で良ければ話聞くけど?」
いや、聞くけどって言われてもな・・・
日向と練習してたら・・・とか絶対言えないし。
う~ん・・・と唸りながら大地の方を向くと、それがオレが話し出す合図だと思ったのか、大地も姿勢を正す。
とりあえず、日向の事だけ伏せといて・・・聞いて見るのもアリか?
そう思ったオレは、昼休みの事を大地に話してみることにした。
「実はさ、昼休みの時に偶然、その・・・紡ちゃんにあってさ」
澤「紡ちゃん?・・・あぁ、昨日の子か」
「そうそう。それで、ちょっと話をしたんだけど・・・その時に、つい、紡ちゃんに対しての疑問っていうか、なんというか、聞いちゃったんだよね、オレ」
疑問?なんの?なんて大地が相槌をうつのを聞きながら話を続けた。
「まぁ、その、バレーが嫌いになったから、辞めようと思ってるんじゃないんじゃないか?とか」
澤「はぁ?!」
「なんか紡ちゃん、今の旭と似たような目をしてると思って・・・ホントはバレー好きなのに、何か壁に当たってるとか、何かにつまづいてんじゃないかとか、余計なお節介しちゃってさ。そしたら」
澤「?それで?」
「泣かれちゃって・・・」
聞こえるかどうかくらいの声でボソッとこぼすと、大地にはしっかり聞こえてたらしく
澤「えっ?!な、泣かしたのか?!」
「ち、ちょっと、大地!声デカイよ!」
澤「あ、あぁ、スマンスマン・・・それでスガはどうしたんだ?ちゃんと謝ったのか?」
「うん・・・まぁ、涙を拭くのにハンカチ渡してすぐに謝ったんだけど、その・・・まぁ・・・」
歯切れが悪く話すオレに、大地がちょっとイラッとしてきたのを感じて、黙り込む。
時間にしたら、ほんの数秒だと思う。
黙ったままでいると、今度は大地がハァ・・・と溜息を吐きながら、オレを見る。