第27章 小さな太陽と大きな背中
桜「紡?」
私の隣にポスンと座り、桜太にぃが顔を覗く。
桜「心配なのは分かるけど···きっと大丈夫だから」
『桜太にぃ···でも、』
桜「俺が大丈夫って言った時、そうじゃない時はあった?」
伺うように笑顔を見せる桜太にぃに、私は小さく首を振った。
桜「でしょ?だから、大丈夫。でも、念の為におまじないをかけてあげようかな?」
よし、それじゃあと言って、桜太にぃがソファーの距離を詰めて腕を伸ばした。
桜「紡は大丈夫、紡なら出来る。怖くない、大丈夫。紡には俺がついてる。だから、不安のドキドキを俺が半分···貰ってあげる」
懐かしい感じに、心が寄り掛かる。
最後におまじないして貰ったの、中学の引退試合の朝だったからなぁ。
負けたらそこで引退。
そう思ったら、なんかガチガチに緊張しちゃって。
そんな私に、桜太にぃがおまじないをかけてくれたんだっけ。
結果は負けで終わってしまって、その試合が最後の試合になったけど。
桜太にぃのおまじないのおかけで、変に気負うことなくコートに立てた気がする。
『感謝してます、桜太にぃ』
桜「···どういたしまして。かな?」
顔を見合わせ笑い合う。
···いつか、梓ちゃんみたいな人が桜太にぃに現れたら。
このおまじないの腕も、明け渡さなきゃいけないんだと思うと寂しいけど。
でも。
私だって、いつかは···また···
誰かに寄り添う日が来ると思うから。
それまでは···まだ、いいよね?
ひとつ瞬きをして、そっと桜太にぃの顔を見る。
その穏やかな微笑みは、私が小さい頃から何ひとつ変わっていなくて···安心する。
慧「紡、なんならオレもおまじないしてやってもいいけど?」
キッチンから様子を覗いていた慧太にぃが、笑いながら声を掛けてくる。
『慧太にぃのは、いらなーい』
慧「何でだよ!」
『だって、ひよこちゃん柄のエプロンでお玉振ってる人のおまじない、効かない気がする···』
慧「ひよこちゃん柄って、これはお前が買ってきたんだろうがっ!それに、桜太だってクマさんだろ!」
お玉ごと私を指して慧太にぃが笑う。
『桜太にぃのはいいの!ご利益あるのは分かってるから!』
慧「贔屓だ!何でそう断言出来る?!」
『だって日向君にも山口君にも、桜太にぃのおまじないやってあげたら効果あったもん!』
