第10章 烏野高校男子バレー部
~菅原side~
昼休みに、日向と待ち合わせをしていた。
とは言っても大地には内緒だから、そんな時間に人があまり来ない体育館前の通路のとこだけど。
オレが打ち込むボールをレシーブしては、あらぬ方向に飛ばしてしまう日向に、何度もボールを打ち込んではこうだよああだよとコツを伝授する。
影山と日向に大地が出した条件を少しでもクリア出来るように、昨日から田中とコッソリ練習相手になっている。
当然、日向本人も自分でも何とかしたいといろいろ頑張っているようで・・・
日「・・・それで、城戸さんにも昨日からずっとお願いしてるんだけど・・・毎回断られてて・・・」
「へぇ・・・紡ちゃんって、そんなにバレーが上手いの?」
日「そうみたいです。影山にもちょっとだけ聞いたんですけど・・・城戸さん、何でレシーブおしえてくれないんだろ?」
そう言う日向に、オレがトスあげてもいいよ?と言うと、影山に認められなければ意味ないからと返される。
紡ちゃんねぇ・・・。
あの子、絶対バレー好きだと思うんだけど。
昨日体育館にいた時も、チラチラとボール見てたりしたし。
それに影山に対してヤケにムキになって話を終わらせようとしてたのもなんか引っかかる。
考え事をしながらボールを打ち込んでいると、急にどこからかマグボトルが転がってきて、日向の足元で止まる。
転がってきた方を見ると、そこには紡ちゃんが立っていた。
『すみません・・・立ち聞きするつもりじゃなかったんだけど・・・』
そう言って紡ちゃんはオレ達に頭を下げる。
別にこれと言って聞かれたら困る事は話してないし、気にしなくていいからって言うと、もう1度頭を下げてどこかへ行ってしまいそうになる。
そんな紡ちゃんを、呼び止めオレは疑問を投げかけた。
すると、途中で日向が、
日「あれ?城戸さん、泣いてる?」
なんて言うからオレはビックリしちゃったよ。
たわいもない会話のなかで、もしかしたら傷つけてしまう事を言ったのかもしれない。
オレは謝りながらポケットからハンカチを取り出し、紡ちゃんに差し出した。
「紡ちゃん・・・ホントにゴメンね。」
『菅原先輩は悪くないです・・・悪いのは、何もわかっていない、自分自身ですから・・・』
そう言いながらも、ホロホロと涙を流す紡ちゃんを見ていたら体が勝手に動いて・・・