第10章 烏野高校男子バレー部
菅「あのさ?・・・えっと~、もし嫌じゃなかったら、なんだけど・・・」
『はい・・・』
何となく菅原先輩がこれから言おうとする事が予測できる。
菅「もし、時間作る事が出来るならさ、日向にレシーブ教えてあげたりとか、出来ない?」
やっぱりその話か・・・。
私は溜息つきながら、菅原先輩の顔を見た。
『お断りします。日向君には悪いとは思います。けど、こういうのってすぐにどうにかなるものとも思えないし、私が介入するより、これから同じチームとして活動するちゃんとした人が教えてあげた方が・・・』
菅「どうしてもダメ?」
『・・・なぜ、私なんですか?練習相手なら、影山だって・・・』
菅「う~ん・・・なぜ?って聞かれると、こう、上手く説明出来ないんだけどさ。もし違ってたらゴメンね。もしかして紡ちゃんがバレー辞めたいって思ったのって、バレーが嫌いになったから・・・じゃ、ないんじゃないかな?って」
私は昨日初めてあった人の言葉にハッとした。
確かにバレーが嫌いになったわけじゃない。
好きか嫌いかと問われれば、前者の方だ。
私はバレーから逃げてるだけなんだ・・・
菅原先輩の言葉に何も言えなくなり黙っていると、
菅「オレは1人、そういうヤツを知ってるからさ。その人と紡ちゃんは、なんだか同じような目をしてる気がするから・・・」
どこか淋しそうな目で、空を見上げながら菅原先輩が言った。
私は、その言葉に胸が押し潰されそうになった。
いつしか離れたしまった幸せを理由に、私は逃げ出したまま、前に進めてさえいない。
そんな自分を見透かされたことで、自分自身が嫌いになりそうだった。
何も言えないまま、視界が滲んで行く。
そんな顔を見られたくなくて、私は横を向きながら俯くと、ひとすじの涙が伝っていくのが自分で分かった。
日「え?城戸さんが泣いてる?」
日向君の言葉に菅原先輩が焦り出す。
菅「えっ?!マジで?!ご、ゴメンね!なんかオレ、傷つける様な事を言っちゃった?!」
わたわたと慌てながら菅原先輩がハンカチを差し出した。
せっかくなので受け取ると、菅原先輩はホントにゴメンねと何度も謝りつづけた。
『菅原先輩は何も悪くないです。悪いのは、何も分かっていない自分自身ですから・・・』
私は眼鏡を外して、お借りしたハンカチで涙を押さえた。