第27章 小さな太陽と大きな背中
『あ、ちょっとスガさん?!もしもーし?!・・・切れてる』
小さな息を吐き、既に待受画面に戻ったスマホを見続ける。
旭「スガが、どうかした?」
『ん~、なんかよく分かりませんけど、大地さんの練習が厳しすぎて死人が出そうとか?それで話をしていたら急に大地さんの声が聞こえてきて、突然通話が途切れました』
話の内容を簡単に説明すると、みるみる東峰先輩の顔色が変わって行く。
旭「大地が怒ると、怖いからなぁ・・・」
それは、確かに。
私にも若干、身に覚えがあるから。
『えっと・・・私、戻ります。東峰先輩はどうしますか?』
立ち上がりながら制服を整え、東峰先輩を見る。
旭「オレも帰るよ。学校まで送るから、一緒に行こう」
そう言って東峰先輩も立ち上がり、ふたりで歩き出す。
小高い丘から出る時・・・ふと、振り返った。
さっきまで座っていたベンチを、ただ、見つめてみる。
あの日、土砂降りの雨の中でひとり泣いていた私は・・・もう、見えなかった。
旭「城戸さん?何か忘れ物でも?」
『あ、いえ、大丈夫です』
足を止めた私に言う東峰先輩にそう返しながら、もう1度振り返る。
バイバイ、あの日の私・・・
バイバイ、私の切ない思い出・・・
本当に、さよなら・・・大好きだった人・・・
『・・・・・・さよなら』
小さく呟き、微笑みを浮かべてみる。
旭「え?なんか言った?」
『いいえ?なぁ~にも?もしかして空耳ですか?』
旭「そっか、ならいいんだ・・・って、空耳とか・・・」
東峰先輩と笑い合いながら、ゆるやかな坂を降りていく。
次にあった時は・・・大事な先輩と、ただの後輩で・・・
そして・・・烏野の、ライバルで・・・
あの人は負けられないチームのメンバーで・・・
私は負けたくないチームのメンバーで・・・
同じ目標に向かって、違う道を・・・歩いて行くんだから。
その為にも、ここにいる東峰先輩を。
烏野のエースと呼ばれる人を、大事にしたい。
『しっかりして下さいよ?東峰先輩!』
旭「痛ッ!!え?!なに急に?!」
バシンとひとつ背中を叩き、ケラケラと笑って見せる。
明けない夜はない。
やまない雨もない。
超えられない壁も、きっとない。
だから、早くそれに気がついて欲しい。
そんな思いを胸に、学校までを歩いた。