第27章 小さな太陽と大きな背中
『だけど、大地さん達から東峰先輩の事を聞いて、私なりにいろいろ考えて気がついた事があるんです。それは・・・』
旭「・・・それは?」
そっと目を閉じ、今までの事を心に浮かべながら・・・ゆっくりと息を吐いた。
『いつの間にか私の中で、みんなと過ごす毎日が大きくなっていて、過去の辛かった事が・・・小さくなっている、って事です』
あんなにも大きくて心を埋め尽くしていた事が、今では・・・
『さっき、実はここに来た時・・・一歩を踏み出すのに躊躇ったんです。足が進まないって言うか、重いというか。でも、東峰先輩がポンって背中を押してくれた時、一歩を踏み出す事が出来たんです』
旭「あれはそう言うんじゃなくて、行こっか?的な感じで、なんて言うか」
『でも、不思議と前に進む事が出来て・・・なぁんだ、簡単だったじゃん!って思えました』
旭「勇者だね、城戸さんは」
そんなんじゃありませんよ、と返して、私はもう1度ゆっくりと深呼吸をした。
『東峰先輩は、過去にあった事でスガさんに申し訳ない、西谷先輩に合わせる顔がない。そうやって自分の気持ちを押し込めて・・・前に進めない自分から、逃げてるだけです』
旭「それは・・・」
私の方が年下だし、言葉を選ばなければとは思うけど。
でも、例えそれが出来ないとしても東峰先輩には・・・気付いて欲しい。
自分が思い悩んでいるほど、周りとの温度差が広がってないって事を。
謝ることなら後からだって出来る。
だから今は、私の行き着いた答えを自分の言葉で・・・伝えたい。
『東峰先輩、自分の手をよく見て下さい』
旭「オレの、手?」
聞き返されて、ただ・・・頷いた。
『その手は、今まで何度もスパイクを打って得点を稼ぎ、同じくらいブロックをして相手に点を取られるのを防いで来た手です。時には仲間の肩を叩き、時には悔しさに握りしめ、どんな時でも・・・みんなと戦って来た、大事な手です』
東峰先輩は私の話を聞きながら、自分の手をずっと見つめていた。
どんなに負け試合の時だって、大勝ちした試合の時だって、みんなと同じ気持ちでいられた事が、その時しかない、今しかない、貴重な時間である事を・・・思い出して欲しい。
誰にだって道に迷う事はある。
それは私だって同じで。
その時にどう過ごしたかではなく、どう抜け出したかが大切だと思うから。
