第27章 小さな太陽と大きな背中
『遠慮はナシです。貧血起こして倒れた時、ご馳走になったからお返しですから』
旭「でもあれは・・・」
『あ、種類たくさんあるから迷ってます?じゃ、私が先に・・・っと』
いつも買っていたボタンを押すと、ガラガラと音をたてながらミルクティーが出て来る。
『じゃ、今度は東峰先輩ですよ?はい、どうぞ』
小銭を入れ、勧める。
旭「・・・えっと、じゃあこれにするよ」
迷いに迷って、東峰先輩は私と同じ物を選び手に取った。
『良かったんですか?』
他にもいろいろあったのにと聞くと、城戸さんのイチオシなんでしょ?と笑いながら返された。
『この先に、ゆっくり話せる場所で・・・』
そう言って風に揺らめく木々の向こうを見ると、ここまで付き合ったんだからついていくよと東峰先輩は穏やかに笑った。
丘の上に続く緩やかな坂道を、一歩ずつしっかりと歩く。
頂上に近付くにつれて感じる息苦しさと、それから胸の痛みが・・・言葉数を少なくさせ、更には俯いてしまう。
旭「なんか顔色悪いけど、大丈夫?」
急に黙り込む私を気にして、屈みながら顔を覗く東峰先輩に、私は力なく微笑むしか出来なかった。
『ここです・・・いい眺めでしょう、東峰先輩
?』
前と変わらずにベンチがひとつ佇み、時折吹く風に、周りの草木が揺れていた。
前に・・・進めない・・・
ベンチに座ろうと声を掛けたいのに、言葉が出ない。
でも、私もちゃんと・・・前に進みたい!
これ以上は吸えないくらいに空気を取り込む。
それを2度、3度と繰り返し気持ちを落ち着ける努力をした。
旭「・・・とりあえず、座ろうか?」
ポンっと背中を押され、フラリと一歩を踏み出した。
あんなに動かなかった足が、呆気なく・・・?
ぽかんとして立ち止まると、またも東峰先輩が慌てだした。
旭「あっ、ゴメン!そんなに強く押しちゃった?!」
『いえ、そうじゃなくて・・・ま、座りましょうか?』
さっきとは違う足取りでベンチまで進み、よいしょってわざとらしく声に出しながら腰掛ける。
『東峰先輩、早く早く!』
隣りをペチペチと叩いて、東峰先輩もそこに座るように促すと、鞄ひとつ分を開けて同じように腰をおろした。
ふたりで、何も言わずに景色を見る。
少し前まではお互いの存在自体を知らなかった、おかしな組み合わせな、ふたり。
