第27章 小さな太陽と大きな背中
あの日の事は、よく覚えてる。
あの日、卒業式の後に及川を探しまくって辿り着いた保健室。
そこにいたのは、その時の養護教諭と及川と・・・紡。
熱っぽいから紡を教室まで送って来いって言われて。
俺は少しだけ、ラッキーだと・・・思った。
中学の時、気が付けば視界の片隅にいた紡。
最初の頃は、別にこれと言って気にはしていなかった。
ただ、小柄なやつが走り回るから目が行くだけ。
そんな風に、思ってた。
その少し後だったか、及川が紡を構いだして。
そんな及川にモヤモヤする自分がいて。
そのモヤモヤの理由がわかった頃、卒業式直前で・・・
その頃の関係を崩したくなくて。
俺はその気持ちにフタをした。
その時に聞いた、赤い糸の、話・・・
及「あの時オレの糸は誰にも繋がってないってみんなで笑って、絶対誰かに繋がってるって拗ねたけど・・・自分から繋ぐ事だって、出来るんだ。それが例え、誰かの糸を断ち切ってでも」
「はっ・・・そんな事が出来るわけねぇだろ」
及「出来ないかも知れない・・・でも、オレは、少しの可能性でもあれば、やる」
たまに見せる・・・及川の本気の眼差し。
その眼差しがいま、俺を射抜く。
「・・・勝手にしろ」
そんな言葉で、話を切った。
・・・そんな言葉しか、出て来なかった。
及「うん、勝手にする」
冷やかな笑顔を浮かべて、及川はそう返した。
「帰るぞ」
それだけ言って、及川と歩き出す。
誰かの糸を断ち切ってでも・・・
堂々と宣言しやがって。
でも今は、そんなお前が羨ましいと思える。
誰かを敵に回しても、欲しいと思うものは手に入れる。
例え、どんな手段を使っても。
そう言える、お前が。
「じゃあな」
及「じゃ、明日ね」
及川の家の前で別れ、今度はひとり歩き出す。
さっさと帰って。
晩飯食って、風呂入って。
そんな事を考えながらも、頭の片隅によぎる赤い糸の話。
何気なく、自分の手に視線を落とす。
まだ・・・繋がって・・・
・・・いや、それはないだろ。
だって俺は・・・
それに、紡はアイツと・・・
大きく息を吐き、何度か頭を振って。
俺は家へと足を向けた。