第10章 烏野高校男子バレー部
思いのほか風が強かったせいもあって、乱れた髪を慌てた様子で手早く直す城戸さんと話を続けようとすると、田中が急に騒ぎ出した。
どうやら城戸さんの元から飛んだものが、清水の作っていたマネージャー募集のチラシだった。
田中が城戸さんにマネージャー希望だったなんて・・・と騒ぐから、つい俺も
「え!それ本当?!」
なんて聞いてしまったが。
城戸さんの様子を見る限り、残念ながら違うようだ。
騒ぎを聞きつけた影山と日向が近寄ってきて、影山が城戸さんと話すのを見て、スガは知り合い?と訪ねていた。
影山の返答が、城戸さんはバレー経験者であるって事を聞いて、みんなで驚いてしまったが。
バレー経験者ならば、道宮あたりが聞いたら飛びついて勧誘するだろうが、もし、もしもマネージャーとして仲間に入ってくれるなら俺達としても嬉しい限りではある。
そんな短絡的な事を考えている横で、城戸さんが飛び跳ねながら影山を黙らせようとわーわー言っている。
どう見ても影山には到底届かない体格の差を埋めるように頑張ってはいるが・・・ここは体育館入口であり段差があって危ないから・・・と声をかける間もなく城戸さんが足を踏み外した。
「あぶない!!」
すぐそばにいた俺は咄嗟に腕を伸ばし、城戸さんの体を掴み抱き寄せる。
間一髪・・・というべきか、城戸さんは床に転がる事なく無事に済んだ。
俺は、ハァ・・・と安堵の息を吐き、城戸さんに軽く注意をしたが・・・
改めて思うが、この子はなんて小柄なんだ。
俺が腕1本で抱きとめられる程の小柄さに、それに加えて軽く、ふんわりと柔らかい感触。
男女の体格差というのは、こんなにも違うものか・・・
驚きのあまり、しばらくそのままでいると« いつまで大地は紡ちゃんを独り占めするつもり? »とスガに言われ慌てた。
別にやましい気持ちがあった訳ではないが、急に手を離しても危ないと思ったから、1度両腕で抱え直してから、ゆっくりと降ろしてあげる。
ちょっとお互い微妙な空気にはなってしまったが、それはそれで怪我なくすんだ事の方が収穫だから気にしない。
城戸さんは何度も丁寧に挨拶をして、日向への用事を済ませ帰っていったが・・・。
残った影山と日向は、それはある意味で問題児なワケで。