第10章 烏野高校男子バレー部
私は手早く身なりを整え、ポケットから自転車の鍵を取り出し手のひらに乗せた。
『これを日向君に渡したくて』
そう言って澤村先輩に伝えている横で、田中先輩が« 何か飛んだぞ? »と言いながらソレを拾い上げ、穴が開いてしまうのではないかという程に凝視していた。
田「こ、これは!・・・これは潔子さんが作ったビラではないか!ほほぅ、なるほどなるほど。そうかそうか、キミ?城戸さんと言ったかな?」
田中先輩は目を輝かせながら私の両肩をガシッと掴み、上から下まで何度も繰り返し眺めた。
田「城戸さんが、男子バレー部のマネージャー希望とは知らずに、さっきは本当にすまなかった事をした」
は?
澤「え?それ本当?!」
え?
菅「え?なになに?紡ちゃんってマネージャー希望だったの?マジで?」
・・・・・・はぁぁぁぁ?!
急な騒ぎに影山と日向君も、お互いに顔を見合わせ首を傾げながらこっちへ歩いてくる。
田「大地さん!これ見てくださいよ!これは今朝、潔子さんが一生懸命に配っていた物!城戸さんはこれを持ってこの体育館にいる。それってもう、そうでしょう!」
田中先輩は興奮しながら、なおもマネージャーがどうのと続けていた。
澤「まぁ、確かにこれは清水が作っていたチラシだけど」
そう言って澤村先輩は私をチラッと見る。
『あの、違うん』
影「お前、女子バレー部入らないって言ってたのは、男子バレー部でマネージャーするからだったのか?」
私の発言に被せて影山が言う。
『ちっ、違うっ!影山は話ややこしくしないでっ』
菅「あれ?2人はもしかして知り合い?クラス同じとか?」
影「クラスも同じですけど、城戸とは中学から一緒です。城戸は中学の時もバレーやってたんで、高校入ってからもバレー続けると思ってたんですけど、女子バレー部入らないって言ってたから」
「「「「バレー経験者?!?!?!」」」」
影山のトンデモ発言に、3人の先輩方と、そしてなぜか日向君までもが一緒になって驚き叫んだ。
『わーっ!わーっ!わーっ!』
影山がそれ以上何も言わない様に、私はぴょんぴょん飛び跳ねながら影山の口を両手で塞ごうとした。
でも、さすがに私と影山との身長差と、加えて体育館の入口の段差が手伝い、肝心な所で届かない。