第10章 烏野高校男子バレー部
『ち、近い・・・って言うより・・・コワイ、ですょ』
真正面から見れない位の至近距離で詰め寄られ、思わず顔を背ける。
その直後、私達にフッと陰が落ちてきたと思ったら、それまで間合いを詰めていた先輩が急に消えた・・・ように見えた。
「こらっ!田中はなんですぐそうやって威嚇するんだ!」
田「だ、大地さんスンマセン・・・なんかこっそり覗いてるし、見た目アレだし、怪しいヤツかと」
「そういう大地も!そんな風に怒ってたらおなじだべ~」
「えっ、マジか。わりぃ、スガ」
3人の会話により、それぞれの名前が何となく見えてきた。
1番最初に近付いて来た人が、田中さん。
もう1人の人に敬語を使うあたり2年生だろう。
次に来た人が大地さん、これは名字なのか名前なのかは分からないけど、状況から見て3年生かと。
そして、最後に現れた人が、スガさん?
こちらも名字かそうじゃないのか分からないけど、大地さんって人に普通に話してるから同じ3年生?かな?
「ゴメンね、びっくりしたでしょ?」
『あ、はい。・・・あ、い、いえ』
急に話を振られ、おかしな返答をしてしまった私に笑いながら、そのまま話を続けた。
菅「えっと、キミは1年生だよね?名前は?あ、そっか。オレは菅原です」
『あ、城戸・・・紡です』
菅「紡ちゃんか・・・カワイイ名前だね。それから、こっちのすぐ威嚇するヤツは2年の田中、それをとっ捕まえてるのが部長の澤村大地っていいます。ちなみにオレのことはみんなスガって呼ぶから、紡ちゃんもそれでいいからね~」
何だか、どこかの誰かを思い出させるようなニコニコ笑顔で、菅原さんという人が他の人までも紹介してくれた。
澤「部長の澤村大地です。さっきは驚かせてゴメン。ほら、田中も!」
田「ども」
『城戸・・・です』
影山と日向君が遠巻きに見ている中で、おかしな自己紹介が交わされた。
澤「それで、えっと・・・城戸さん?バレー部に何か用事、かな?」
柔らかく笑みを浮べながら、澤村先輩は言った。
私は本来の目的を果たすべく、さっき日向君とぶつかった後の事を思い出しながらポケットを探っていた。
『あの、これなんですけど・・・』
そこまで言いかけた時、ブワッと突風が吹き抜けた。
私は咄嗟にポケットから手を引き抜き、風に遊ばれる髪とスカートを押さえた。