第26章 交差する想い
澤「退院、おめでとう。予定より早かったから、驚いたよ・・・それは昨日も言ったか」
『でも、私は私で明日が待ちきれなくて・・・来ちゃいました!』
肩を竦めて笑うと、澤村先輩もつられて笑った。
『あの・・・ところで大地さん?見たことない人がいるんですけど、あの人もバレー部ですか?』
離れたところで田中先輩と立ち話をしている、少し小柄な人に視線を向けた。
澤「あぁ、そうだった。こないだまで事情があって部活に来てなかったからね」
事情・・・?
『故障・・・ですか?』
澤「いや、そこら辺は全く問題ない。ただ、ちょっとね・・・とりあえず紹介するよ・・・西谷!ちょっと!」
西「はい!」
西谷と呼ばれる人は、澤村先輩の呼び掛けに大きく返事をして駆け足でやって来た。
澤「紡、2年の西谷だ。ポジションは・・・リベロ。烏野の守護神だ」
リ・・・ベロ・・・
澤村先輩だって相当レシーブ上手いのに、その人に守護神と呼ばれるって事は、かなりの信頼関係が出来ているんだと思った。
西「西谷だ。よろしく!」
『あ、1年の城戸です。よろしくお願いします』
手を差し出され、私もそれに応えるように握手を交わした。
・・・・・・?
なんで私、凄く見られてるんだろう?
手も解かないし。
『あの・・・、なにか?』
西「前にどこかで・・・オレと会った事、ないか?」
『私と、ですか?・・・いえ、多分・・・ないかと・・・』
西「いや、でも確かにどこかで・・・変なこと聞くけど、髪型とかそういうの、変えたことあるか?」
・・・もしかしてこの人、少し前の私を知ってる・・・?
少し動揺しながら、助けを求めるように澤村先輩を見た。
澤「西谷、なんだ急に?新手のナンパか?それともスガの真似してセクハラか?」
西「セクハラ?!・・・あ、わ、悪い」
澤村先輩に言われて、西谷先輩が手を離した。
西「確かにどこかで会ったような気がするんだよなぁ・・・」
澤「ま、世の中には似てる人が3人はいるって言うし?そういう感じだろ?」
西「そうっすかねぇ・・・」
別に、少し前の私の事を知っている人がいてもいいとは思う。
だけど、それを知っているってことは。
いろんな話を知っているかも知れないと思うと、なんとなく・・・今は言えなかった。