第10章 烏野高校男子バレー部
「ま、普段からあんだけ仲良いんだから、心配する事ねーだろ」
そう言いながら、影山はまた1つパンを取りだし食べ始めた。
『影山、あのね。私さ、岩泉先輩とはだいぶ前に別れてるから。あと、バレーはもうやらない・・・だから、だから烏野に来た』
一気にカミングアウトして、大きく息を吐き影山の方を向くと、驚きのあまり食べていたパンを詰まらせてもがいていた。
『ちょ、ちょっと影山!大丈夫!?』
私は手元にあった影山の牛乳を渡してあげて、背中を叩いた。
「お、お前、オレを殺す気か!!」
『人聞き悪いこと言わないで!勝手に喉詰まらせたくせに!』
「つうか、岩泉さんと、その、」
意外にも気を使ったのか、微妙な言い回しで聞いてくる。
及川先輩に話した時もそうだったけど、いずれ分かることだし、影山に簡単に経緯を話した。
『だから、岩泉先輩とはおしまいです』
短い沈黙のあと、フッと息を吐き影山は私を見た。
「岩泉さんの事は、もう、いい。それより、バレー辞めるって言ったのは何でだ?自分のポジションが出来ないからか?」
『そんなんじゃないよ。ただ、もういいかな?って。小さい時から続けてきたけど、そろそろ・・・ね。だって私、女の子だよ?オシャレもしたいし、恋愛だってたくさん・・・たくさんじゃなくても、きっとまた恋愛出来る日が来るし。ま、そういう事』
影山は、何だか腑に落ちない顔をして黙って何かを考えていた。
「城戸」
『ん?』
「お前、バレーは好きか?」
『す・・・・・・どうかな?』
一瞬、« 好き »と言いかけて、違う返事をした。
本気でバレーをやってきて、なおかつ、これからもバレーを続けて行くであろう影山に、少し曇ってしまった私の心の内は見せられなかった。
『影山は、ここでバレーやるの?』
分かりきった答えの質問を投げてみる。
「やる!今日の放課後、バレー部の体育館行く!」
『だよね。今度はさ、影山にとって楽しい部活になるといいね』
「あ?どーゆー意味だ」
『べっつにぃ?・・・そだ。試合出れるようになったらさ、声かけてよ?応援しに行くから。ね?お・う・さ・ま?』
「テメェ、その呼び方やめろ!」
私達はふざけ合いながらも手早く片付けをして教室に戻った。
私はもう、バレーには関わる事はないと思っていた。