第10章 烏野高校男子バレー部
「ククッ・・・」
『フフッ・・・』
お互い言い合ったあと目が合うと同時に笑ってしまった。
「やっぱ城戸か」
『だから最初からそうだよって言ってるでしょ!』
振り出しに戻ったかの様な声掛けをしながら、お互いに腕を叩きあった。
「時間ねぇし、飯食いながら話す。とりあえずそこら辺で待っとけ」
それだけ言って、影山はフラッといなくなる。
どこに行くのか聞けばよかった、なんて思いながら、ひとまず私はすぐ横の階段に腰掛けた。
ここは校舎から体育館へ移動する通路と、中庭へ続く渡り廊下の端っこ。
昼休みだと言うのに、それほど人影が見えないのは場所柄だろうか。
「ほらよ。受け取れ」
頭の上にポスっと何かを乗せられ、上目遣いに影山を見ながらそれを受け取り、確認すると
私は目を輝かせた。
『ミルクティー!』
渡させたものは、いつでも気に入って飲んでいる銘柄のミルクティーであり、学校の自販機にこれがあるのなら、いっそマグボトルは持って来なくても・・・なんて思ってしまう。
「お前、いつもそれ飲んでたし。さっき走らせたっぽいからな。オレは早歩きだったけど」
『一言多い!影山と私の体格差考えて物言ってよ。でも・・・ありがとう』
影山は自分の牛乳にストローを刺しながら、私の隣に少し間を空けて座り込み、ガサガサと袋の中から購買のパンを出し食べ始める。
私もそれを見て、自分のお弁当を広げた。
「お前・・・何で烏野にいるんだ?」
焼きそばパンをほうばりながら、影山は言う。
『何で?って言われても・・・』
「じゃ、どうしてだ?」
『聞き方が違うだけじゃん・・・』
「受験の時、推薦いっぱい来てただろ。白鳥沢も青城もあったはずなのに、なんで烏野?お世辞にも烏野女子バレーは強くないだろ」
『う~ん、どうかな?ま、別にいいじゃん、どこの高校でもさ』
「ま、いいけど。それよりお前、そのナリはなんだよ。岩泉さんも知ってんのか?」
箸を持つ手がピタリと止まる。
『影山もさ、知らなかったんだよね・・・』
何となく顔が上げづらく、お弁当の卵焼きをつつきながら俯いてしまう。
「なんだ?ケンカでもしたのか?」
どうしてみんな、喧嘩して落ち込んでると思うんだろう。
何て切り出せばいいのか分からず、黙ったままでいた。