第26章 交差する想い
何かあると、慧太はすぐ・・・遠くからチクリと攻撃してくる。
「また俺の頭の中を読んだな?」
ふぅ・・・と小さなため息を吐きながら、俺は椅子にもたれ掛かった。
慧「バレバレなんだよ、桜太のは」
「なんだよそれ・・・」
俺がそう返すと、いかにも慧太らしい笑いを浮かべて俺を真っ直ぐに見る。
慧「オレには、バレバレって事だ」
「・・・はいはい、そうですか」
双子ってヤツは・・・
どうしてこんなにも、通じてしまうものなんだろうか。
そんな事を考えながら、オーバーテーブルに積まれた課題に視線が止まる。
そう言えば、紡はあの問題を解けたのかな?
何気なく数学の課題を手にして開くと、はらりと1枚のメモが落ちた。
拾い上げ、公式や数列が並んでいるのを自然と目で追ってしまう。
「へぇ・・・」
慧「急になんだよ?」
メモを慧太に向け、軽く公式や数列の説明をする。
慧「それはオレだって見りゃ分かるけどな。それがどうしたんだよ」
「誰かが紡に、勉強を教えてくれたって事だよ。紡はこの分野は苦手だからね。メモを見た限り、普段からよく勉強している人みたいだね・・・でも、誰だろう?」
キレイな文字で書かれたメモに、もう1度視線を移した。
慧「彼氏・・・とか?」
「彼氏?!」
慧太の言葉に思わず声が上がってしまった。
慧「バカッ、声がデケェよ!紡が起き・・・た」
え・・・?
2人で同時に紡を見る。
『んん・・・もぅ・・・慧太にぃうるさいんだけど・・・』
丸まっていた体を伸ばしながら、紡が慧太にモニョモニョと文句を言っている。
慧「言っとくけど、今うるさかったのは桜太だからな?」
「起こしちゃってごめんね、紡」
『ん~・・・大丈夫。慧太にぃはいつもうるさいから、慧太にぃだとばっかり・・・』
小さく欠伸をしながら、まだ慧太がうるさいと言い続ける。
慧「お前なぁ・・・なんでいつもオレには塩対応なんだよ。そんなこと言ってっと、コレやらねぇぞ?」
言いながら慧太が持ってきた苺をひとつつまんで見せると、急に紡の機嫌が良くなる。
『苺?!私に?!・・・慧太にぃ、大好きかも』
慧「かも?じゃあコレはやれねぇな?」
『慧太にぃ大好き!』
慧「合格!ほれ、口開けろ」
慧太がつまんだ苺を口に入れてあげると、紡はニコニコとする。