第26章 交差する想い
母さんのツッコミに思わず口が滑る。
母「ちょっと力!いま抱きしめたって言ったわよね?!」
「言ってない!気のせいだろ?!」
母「お母さん、聞こえたからね!」
祖母「彼女でもないのにか?力・・・ちゃんと責任取ってお嫁に貰わなきゃだね」
「ばあちゃんまで何言ってんだよ!」
祖母「力に嫁っ子かぁ・・・ひ孫の顔見るまでは元気でいなきゃなぁ」
・・・ホント、勘弁して。
そしてエレベーターよ・・・早く1階に着いてくれ。
母「力のお嫁さん?!大変・・・お父さんに電話しなきゃ!お父さんいま電話に出られるかしら・・・」
「しなくていいから!!」
あぁ・・・猛烈に頭が痛くなってくる。
そんな勘違いの恐ろしい母さんに学校まで車で送るとしつこく誘われ、仕方なくそうしてもらうと・・・案の定、母さんとばあちゃんの猛攻は続き。
学校へ着く頃には精神的に本当に疲れきってしまった。
・・・はぁ。
体育館に入る前にこんなに疲労感が溜まるとか。
さっきまでの俺の弾む心を返してくれ。
手早く着替えを済ませ、体育館に入る。
「遅れてスミマセン!今から練習入ります!」
澤「おぅ!柔軟しっかりやってからな!」
「はい!」
タオルや着替えを置き、1人で準備を始める。
菅「縁下、オレのお願いは?」
来た・・・俺の嫌な予感が命中・・・
「ちゃんと果たして来ました。任務完了です」
サラリと答え、何となく危機感を覚えて数歩下がる。
菅「そっか!縁下サンキュー!じゃあさ?その幸せふわふわ感をオレに分けてくれ!」
き・・・キターーーーーー!!
「あ、いえ、な、なんの事で・・・すかね?」
しどろもどろになりながら、更に後ろに下がる。
菅「だからさ?紡ちゃんにハグして来たんだろ?」
「し、しましたけど!スガさん?!にこやかな笑顔で近寄らないで下さいよ!」
菅「遠慮すんなって」
「してません!むしろイヤですよっ!」
朝練の時のようにジリジリとスガさんが迫って来る。
暑さとは別の、ヒヤリとしたモノが背中を伝う。
・・・そうだ!
スガさんは副主将だ!
ここはそれなりの言い訳をして、練習に戻って貰うしか・・・
「あの、スガさん?」
菅「ん?」
「いま、練習中・・・じゃないですか?」
菅「だね?」
だね?じゃなくてね!!